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生きろ 島田叡 戦中最後の沖縄県知事のmeikoのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

76年前のことを、しかも島田さんの映像も本人取材も何もないなかで彼を浮かび上がらせるのは相当に難しいのだな、というのを感じる前半。昔の書き言葉は難しいし、それで話がつなげられていくと途中でついていけなくなりかけた。横の人はいびきをかいて寝てるし、見てる人はほぼ高齢者。
うう、、と思いかけたけど、
後半、沖縄戦が激しくなるにつれ気づいたら見入っていた。
まだ咀嚼しきれてないけど、なんであれだけの沖縄県民が亡くなったかは、軍の動きが決定的な理由だったんだと初めて知った。戦争ではとにかく軍がいるところが狙われる。住民が逃げている南部に軍部も撤退すれば、砲弾もついてくる。海軍と陸軍が割れて行動すれば、地獄の場所がふたつに増える。

そして、生きのびることが徹底的に悪とされていた世の中で、たくさんの人が、誰かに「生きろ」と言われて命拾いをしたり、目を覚ましたということが、こんなにリアルに迫ってきたことはなかった。自分1人じゃ気持ちがぶれることはある、自分を大事にできないときもある、そんなときに誰かに「生きて、次の春を見て」と言われることがどれだけその人を救うかということが胸に迫る。わたしも誰かにそんなふうに言える人になりたいな...と思う。島田叡に言われた人もいたし、日本兵に言われた人もいた。
いろんな軍人の言動を聞いていると、いろんな上司の顔が浮かんでくるのはわたしだけ?戦争はなくても、メンツや上の顔色ばっかり気にしたり、自分勝手に突き進んだり、部下のことを人とも思っていない「上の人」は今でもいっぱいいるよ。そういう人がいる限り、惨事はまた起こるんじゃないか。

「島田さんはね、わたしに体を大事にしなさいと言った。最初餞別にタバコをくれようとしたけど、君の年じゃだめだな、と言って代わりに黒砂糖をくれた。当時、ただの一兵卒をあれだけ1人の人間として見てくれる人なんていなかった」と語るおじいさんの話が全てでした。
結局、どうして最後まで島田叡が地獄の中で「人間性」を失わなかったのかは分からないままだし、本人は自分の命を大切にせずに死んでしまった。責任なんて島田さんが死んでも取れないのに、と戦後76年の私は簡単に思ってしまうけど、自分を守る「人間性」までは持ち切れなかった、か、最初から諦めていたんやろうな。死んでほしくなかったし、この映画に出てきて当時の教訓を話してほしかった。そこまで求めるのは酷なのかな... 関西弁だったひとりの沖縄県知事が安らかにねむっていますように。
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