叡福寺清子

Firebird ファイアバードの叡福寺清子のレビュー・感想・評価

Firebird ファイアバード(2021年製作の映画)
3.5
軍属の同性愛と言えば連想されるのが『インスペクション』ですが,本作はそれを遡ること40年前.そしてソ連邦占領下でのエストニアでの話.当時はブレジネフ書記長政権.1960年代生まれの方々には,郷愁の感すらあるブレジネフ書記長.KGBが暗躍し,密告が推奨され,組織が当然のように盗聴するそんな時代.加えるに同性愛が違法な時代.人目をかいくぐって逢瀬を楽しむ二人は,さぞや苦労した事でしょうか.そんな時代に極東の小国では,今で言うニューハーフの方がテレビで人気者になっているとは想像すらできないんじゃないでしょうか.こんばんわ三遊亭呼延灼です.今度生まれてくる時には是非日本人として生まれていらっしゃい.

当事者のお二方は致し方ないとしましても,一番の犠牲者は愛した男が二人とも,しかもその二人が同衾の仲とと知ってしまった奥様のルイーザさんでございましょう.さらには,できればお子様には一生秘匿されたと願いますが,普通に生きていればその息子さんも存命中なんですよねぇ.その事実を知らされた時の息子さんの胸中でもう一本映画が撮れそうな気が致しますが如何かしら.
そういや「僕お父はゲイだった」的視点で描かれた作品がぱっと思いつかないんだけど,なんかあったかしら.

あと視聴中に雑誌「JUNE」を思い出したのは,アラ還なんで許して下さい.調べたら「JUNE」は95年11月に廃刊されていますので,今のお若い方は存じないやもしれませんが,この雑誌がなければ今みたくBLが市民権を得ていなかった,すくなくとも違う形になっていたのは確実でございましょう.