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a hope of NAGASAKI 優しい人たちのTSのレビュー・感想・評価

3.6
【77年前の記憶】76点
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監督:松本和巳
製作国:日本
ジャンル:ドキュメンタリー
収録時間:70分
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 77年前の今日、長崎に落とされた原子爆弾。広島を扱った作品やドキュメンタリーは多いですが、皮肉にも長崎を扱ったそれは少ない。一番か二番かの違いだけでこうも違うのは複雑な気持ちではありますが、やはり実際に体験をした人の話を聞くことにより、そのバトンは多少なりとも繋げられるのかもしれません。今作は70分という短い尺ではありますが、当時の経験をした人からのインタビューを集めたドキュメンタリー。丁寧に字幕もつけてくれており、言葉からも文字からもその強烈さが伝わってきます。

 戦争は経験した人にしかわからない。戦争はもう二度と起きてほしくないですが、経験した人が亡くなれば、その恐ろしさもわからなくなるからまた人類は私利私欲のために同じ過ちを繰り返していくのです。ロシアのウクライナ侵攻も記憶に新しく、感染症、元首相暗殺など、まるで戦前に戻ってしまったような状態。非常に後先が暗い世の中ではありますが、8月6日、8月9日はやはり心を入れ替えるためには今後も記憶に刻まれないといけない日と思いました。忘れたら戦争は起こる。忘れないために生きていく。今作はその行為をより強くする材料になると思いました。当たり前ですが僕自身戦争は経験したくもありません。そのためにはどうしたら良いのか。為政者ではない立場の者が一体何ができるのか。戦争の経験をしていない者がどれだけ何を言っても説得力が欠けることは承知の上ですが、それでも広めていかないといけません。記憶のバトンを繋げていきたいところです。

 今作を見て特に印象的だったのは、それでもアメリカを恨んでいるわけではないということ。戦前の教育ではとにかくアメリカを敵国として擦り込まれましたが、戦争が終わったら全員がそうとは言えないでしょうが、国に対して特別の恨みを持っているわけではないようです。むしろ友好的に接する事ができるようで、戦争の無意味さ、惨さがわかってしまう一面でもありました。ただ、アメリカ側も日本に原爆を落としたという知識はあるものの、どこに落としたか知らない人が多いというのには複雑な気持ちになりました。広島だけでなく、長崎ももちろん忘れてはならない。記憶が風化しないように、今後も伝えていき、戦争が起きない事を願いたいです。
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