半兵衛

IL GATTO 猫の半兵衛のレビュー・感想・評価

IL GATTO 猫(1977年製作の映画)
4.1
ボロアパートを壊して土地を高く売ろうとする因業な大家兄妹が住人をあの手この手で追い出そうとするパートと飼っていた愛猫が何者かに殺害され真犯人を追跡する二つのドラマがブラックなコミカルさと本格的なミステリーやサスペンスをぶちこんで濃厚すぎる、けれどはまればやみつきになる奇妙な面白さのある作品に。住人が殺されたり住人に政府や犯罪組織が絡んだ大事件が起きても大家は全く意に介さず住人を追い出すことに必死になっているのに笑えるし、愛猫が殺されて捜査している理由も大事にしていたからではなくそれを利用して真犯人の住人を部屋を追い出させようという糞過ぎる理由なのも最高。

そんな変な作品なのに猫の足跡や傷など些細な証拠から次々と住人の部屋を捜査(ついでになかを物色)している場面はヒッチコックみたいなスリリングさと覗き見の興奮があってなかなか楽しい、やはりアパートやマンションは現実では最低行為だけど作品では『屋根裏の散歩者』をはじめ覗くという行為は必須かつ面白くなるパターンであることを再確認。

大家が個性が強すぎるためか住人もボロアパートに住んでいるとは思えない超個性的な人間が揃っている。特に部屋を改造しまくって娼館みたいなことをして異常プレイを繰り広げる住人のインパクトが凄い。

猫の使い方も上手く、冒頭アパート内を歩く猫を通して住人の位置やキャラクターを説明する演出が見事でこの映画が面白いことを確信した。よくよく考えたら猫も覗く特権のある生物なんだよな。

兄が惚れている住人の女性のやっていることがまんま「黒皮の手帳」なのに爆笑。そして結構上手くいっていたのに大家兄妹が真実を知らないままことごとく妨害してピンチに追い込むのも◎。

大家兄妹がことあるたびに事件を持ち込み相談に乗るもとんでもない結果になり上司から怒られる警視がいい味、大家兄妹が来るたびに鬱になりそうな顔をしているのがいい。

ラストのオチが推理小説みたい、そして覗いていた人間が覗かれる立場になるというのも映像的。

御大モリコーネのヘンテコだけど作品にあっているスコアも印象に残る。

それにしても知名度のあるキャストがいないためか日本では評価されていないのに、ひっそりと国内でDVD化していたというのも販売会社の人間にセンスがあるというべきか変なセンスの持ち主と言うべきなのか判断に困るな。
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