ダイナ

ノーカントリーのダイナのネタバレレビュー・内容・結末

ノーカントリー(2007年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

自然音と生活音と死につながるバイオレンスサウンドは一切の茶化しを許さず、殺伐とした本作の世界観は「壁一枚隔てた先には敵がいる?な緊張感・一寸先は生死の分かれ目」を痛烈に印象づけてくれます。本作の緊張感は自分も息を潜めてシガーに気づかれまいとしてしまうくらいの迫力。

監督過去作を思うと笑わせを削った作りになっているかと思ったら中盤からバンドの呆然立ちであったりダイナミック万引きであったりとシリアスだからこそ頬緩んじゃう演出もちょくちょく散見(シガーの表情とか振る舞いは終始面白いし笑えるっちゃ笑えるけどコワイ印象の方が優ってるのが個人的感覚)。荒地・モーテル・大通り、多シチュエーションにおける緊迫した戦闘や、荒地に横たわるマフィアや犬、プールに浮かぶ女性等、死体が転がっているシーンの無情な画も好み。大金隠蔽工作や自己治療・ボヤ万引きに見られる、キャラの工夫描写もグッときます。殺害シーンは直接的に映すだけでなく、(シガーヤってますやん…)と匂わせるシーンもあり、緩急つけたあの世の送り方も展開をダレさせない惹きつけの技を感じます。北野武の因数分解の話を思い出したり。

血まみれのシガーが少年たちに話かけられるシーンはモスとの対比となっていて印象的。ルールの重要性を説く、人間の一段上の存在のようなシガーもモスと同じ道筋を辿るのは不条理な世界の中みんな平等ということで…。

原題にも作中でも示されている老人視点。最近の犯罪は理解できないという嘆きは、いつの時代でも聞く老いた世代の常套句なんじゃないのと思ってアメリカの犯罪件数ググってみると1990年代がピークらしい。本作が1980年代とのことで上昇中な情勢と考えると、その考えに至るに納得する年代設定を敷いていたんだなあと得心です。しかし2つ目の夢語りのまどろっこしさよ。もう少し噛み砕いて話てほしい。一度聞いて理解できる人何%なんだ。親父が待ってるということは引退という選択は親父に肯定されているということで…いいのか。まあ夢って大抵人に話せる状態の完璧なお話形式でなく支離滅裂なストーリーだよなと考えるとこの方がリアルなのかもしれないですね。
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