いがらむ

ノーカントリーのいがらむのレビュー・感想・評価

ノーカントリー(2007年製作の映画)
4.3
静の活劇と呼ぶべき、2000年代の撮影技術の進化とその限界が生み出す創意工夫が際立つ「ミスティック・リバー」、「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」に並ぶ傑作。両手をだらんと下げ、決して走らない、立ちすくむことで画面が張り詰めるあの空恐ろしさはなんだろう。そしてその緊張を弛緩するトミー・リー・ジョーンズを筆頭とした登場人物の軽い存在感も見事。見えない空砲のようにその恐ろしさの正体をひた隠したまま、空疎な不条理の追走劇は幕を閉じるのだが、殺意を剥き出しにした殺人や、あっけなく当の犯人が殺される部分の処理など、「逃げ」とも違う見せない演出が際立つ。そして、ひたすら州境をまたぐ車の移動がコーエンの不条理劇には不可欠なのだ
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