ナツミオ

ノーカントリーのナツミオのレビュー・感想・評価

ノーカントリー(2007年製作の映画)
4.0
WOWOW録画鑑賞
【アカデミー賞特集】

”この世界の一部になろう“

”人間ってのは…
 奪われたものを取り戻そうとして
  更に失う……”

初、コーエン兄弟。
バルデム演じるサイコな殺し屋、おカッパ頭も不気味で怖すぎるクライム・サスペンス作品。面白〜い‼️

第80回アカデミー賞で作品賞など4部門に輝いた、コーエン兄弟による傑作。
麻薬絡みの抗争から、偶然大金を手に入れた男が殺し屋に追われ……。

受賞歴
・第80回(2007)アカデミー賞4部門受賞
(作品・助演男優ハビエル・バルデム・監督・脚色賞)
・ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞3部門受賞(作品・アンサンブルキャスト・脚色賞)
・ワシントンDC映画批評家協会賞4部門受賞(作品・監督・助演男優・アンサンブル演技賞)
・ニューヨーク映画批評家協会賞4部門受賞(作品・監督・助演男優・脚本賞)
・ゴールデングローブ賞2部門受賞
(助演男優・脚本賞)
他多数の映画賞受賞

原題 『No Country for Old Men』

2007年米作品123分
監督・製作・脚本・編集 ジョエル・コーエン イーサン・コーエン
製作 スコット・ルーディン
原作 コーマック・マッカーシー
『血と暴力の国』
音楽 カーター・バーウェル
撮影 ロジャー・ディーキンス
出演 トミー・リー・ジョーンズ ハビエル・バルデム ジョシュ・ブローリン ウディ・ハレルソン ギャレット・ディラハント ケリー・マクドナルド 

翻訳者 松崎広幸

(WOWOW番組内容より)
テキサスの荒野で猟をしていたベトナム戦争の帰還兵モス(ブローリン)は、銃撃戦で大勢が死んだらしき麻薬取引の現場に遭遇。彼はそこで見つけた現金200万ドルを妻カーラ・ジーン(マクドナルド)と住む家に持ち帰る。だが気になることがあって現場に戻ったモスは、取引をしていた麻薬組織のどちらかに襲われ、その後も冷酷非道な殺し屋シガー(バルデム)に追われる。一方、老保安官エド・トム・ベル(ジョーンズ)は一連の事件を捜査するうち、モスが事件に巻き込まれたと知るが……。

(WOWOW解説より)
「ファーゴ」など、今や米映画界にとって貴重になった作家性を刻み続ける鬼才コンビ、コーエン兄弟が、コーマック・マッカーシーの「血と暴力の国」を映画化。
全編にわたって緊張感あふれるサスペンス&バイオレンスが展開する一方、トミー・リー・ジョーンズ演じる老保安官が時代の荒廃を嘆く姿も描くなど現代への警告も盛り込み、単なる娯楽を越えた見ごたえ満点の傑作に仕上げた。
キャストでは、不思議な髪形で役作りしたことも含め、圧倒的な恐怖感を醸した殺し屋役のハビエル・バルデム(アカデミー助演男優賞受賞)が突出。

執拗なまでに標的を追いつめる殺人マシーンから狙われた人々の運命を描くハード・サスペンス。

コーエン兄弟は本作品を、自分たちが監督した映画の中で飛びぬけて暴力的な作品だと語っているそう。

個性的に面々の中でもハビエル・バルデム演じる殺し屋シガーの異様さが際立つ‼️
こちらが真っ先に感じた印象だが、
終わってからも、回想と夢の話に考えたくなる。バルデムが夢に出てきたらうなされること必死⁈



以下、ネタバレあり
・シガーが持つ武器は、
 牛を屠殺するための、空気銃のようなものらしい。一見、武器に見えない恐ろしい武器。

・観ているうちに、主役が変わっていく。
麻薬組織の金を奪ったモスが、サイコな殺し屋シガーの執拗な追跡から逃れ逃げ切る話と想像していたが、見事に裏切られる展開。予想の斜め上へ行く展開。

・シガーを追う殺し屋ウェルズ(ウディ・ハレルソン)が中盤登場して活躍⁈
する間もなく退場⁇

・老保安官ベルと叔父エリス(バリー・コービン)の禅問答のような会話。ベルの父親だけでなく、祖父や叔父も保安官だった家系。そして皆、職務を全うしている⁈

・ベルが犯行現場のモーテルへ行くシーン。部屋の中に潜むシガー。鍵のシリンダーが抜けた穴の金属に映る影。
ベルとシガーが遭遇すると思いきや…
肩透かしのシーン。
結局、ベルとシガーは最後まで対峙する場面が無い、変わった作り。

・そしてシガーが遭遇する事故がモヤモヤする終盤。
重傷のシガーは少年から服と金を交換し、逃走。
メキシコ国境でモスも同じことをやっている。

・そして、冒頭と終盤の老保安官ベルの回想と夢の話。

原題から
 ”おいぼれを必要とする国はどこにもない”
という、老保安官ベルが何も変わらない世界に失望し引退する。

ラストの夢の話の一つ目
・亡き祖父、父親が待つ死。父からもらった金を無くした話は、父の期待に応えられなかった自身の想い。
祖父や父親は自分より若い時に亡くなっている。

二つ目の夢の話
・何も変わらない世界は、夢の中で進む雪山の困難な道のり、その先で父親がかざす牛の角に入れた火は、目指す目的地。
 目的地=死
父や先祖が辿ったであろう道のりを同様に進むベルは、父親たちの想いかも⁈





【忘備録】ネタバレあり
(登場人物・キャスト)
・エド・トム・ベル保安官 Ed Tom Bell
演 - トミー・リー・ジョーンズ
保安官。
殺人現場から200万ドルを持ち去ったルウェリン・モスが殺し屋アントン・シガーに狙われていることを知り、2人の行方を追う。

・アントン・シガー Anton Chigurh
演 - ハビエル・バルデム
殺し屋。
持ち去られた200万ドルを狙っている。独自のルールを持っている狂人。顔を見て生きている人間はいないという。

・ルウェリン・モス Llewelyn Moss
演 - ジョシュ・ブローリン
元溶接工。ベトナム帰還兵。
偶然見つけた200万ドルを持ち去ったことで、持ち主であるギャングやアントン・シガーに追われることになる。

・カーソン・ウェルズ Carson Wells
演 - ウディ・ハレルソン
賞金稼ぎ。ベトナム帰還兵。
アントン・シガーを知る数少ない男としてギャングのボスに雇われる。

・カーラ・ジーン・モス 
Carla Jean Moss
演 - ケリー・マクドナルド
ルウェリン・モスの妻。
気弱な性格。ルウェリンの指示でオデッサの実家へ避難する。

・ウェンデル保安官助手 Wendell
演 - ギャレット・ディラハント
エド・トム・ベルの助手。

・ロレッタ・ベル Loretta Bell
演 - テス・ハーパー
エド・トム・ベルの妻。

・エリス Ellis
演 - バリー・コービン
エド・トム・ベルの叔父。元保安官。
犯人に撃たれたことで足が不自由になっている。

・ガソリンスタンド店主
演 - ジーン・ジョーンズ
アントン・シガーが訪れたガソリンスタンドの店主。
彼の機嫌を損ねるが、コイントスに勝ったため見逃される。

・ウェルズの雇い主 
Man who hires Wells
演 - スティーヴン・ルート
ギャングのボス。

・El Paso Sheriff
演 - ロジャー・ボイス

・Carla Jean's Mother
演 - ベス・グラント

・Poolside Woman
演 - アナ・リーダー


主な受賞
2007年
・ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞:
作品賞、アンサンブルキャスト賞、脚色賞

・ワシントンDC映画批評家協会賞:
作品賞、監督賞、助演男優賞、アンサンブル演技賞

・ニューヨーク映画批評家協会賞:
作品賞、監督賞、助演男優賞、脚本賞

・ニューヨーク映画批評家オンライン賞:
助演男優賞

・ボストン映画批評家協会賞:
作品賞、助演男優賞

・シカゴ映画批評家協会賞:
作品賞、監督賞、脚色賞、助演男優賞)

・サンフランシスコ映画批評家協会賞:
監督賞

・サテライト賞:
作品賞(ドラマ部門)、監督賞

・サウスイースタン映画批評家協会賞:
作品賞、監督賞、脚色賞、助演男優賞

・ダラス・フォートワース映画批評家協会賞:
作品賞、監督賞、助演男優賞

・オースティン映画批評家協会賞:
助演男優賞、脚色賞

・サンディエゴ映画批評家協会賞:
作品賞、助演男優賞、撮影賞、アンサンブル演技賞

・フェニックス映画批評家協会賞:
作品賞、監督賞、助演男優賞、アンサンブル演技賞、撮影賞、脚色賞

・トロント映画批評家協会賞:
作品賞、監督賞、助演男優賞、脚本賞

・ラスヴェガス映画批評家協会賞:
作品賞、監督賞、助演男優賞

・フロリダ映画批評家協会賞:
作品賞、監督賞、助演男優賞、撮影賞

・ユタ映画批評家協会賞:
作品賞、監督賞、助演男優賞、脚本賞

・セントルイス映画批評家協会賞:
作品賞、監督賞

・デトロイト映画批評家協会賞:
作品賞、監督賞、助演男優賞

・オクラホマ映画批評家協会賞:
作品賞、監督賞、助演男優賞

2008年
・ヒューストン映画批評家協会賞:
作品賞、助演男優賞、名誉テキサス人賞

・カンザスシティ映画批評家協会賞:
助演男優賞、脚色賞

・放送映画批評家協会賞:
作品賞、監督賞、助演男優賞

・オンライン映画批評家協会賞:
作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞、撮影賞、編集賞

・USCスクリプター賞:
脚色賞

・ゴールデングローブ賞
助演男優賞、脚本賞

・セントラルオハイオ映画批評家賞:
作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞

・アイオワ映画批評家協会賞:
作品賞、監督賞、助演男優賞

・全米監督協会賞:
監督賞

・ノーステキサス映画批評家賞:
監督賞、助演男優賞、撮影賞

・全米映画俳優組合賞:
助演男優賞、アンサンブル演技賞

・全米製作者組合賞:
長編映画賞

・ロンドン映画批評家協会賞:
作品賞、英国助演女優賞

・オンライン映画&テレビジョン協会賞:
助演男優賞、アンサンブル演技賞、脚色賞、編集賞

・アメリカ脚本家組合賞:
脚色賞

・英国アカデミー賞:
監督賞、助演男優賞、撮影賞

・アカデミー賞:
作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞

2009年
・映画館大賞「映画館スタッフが選ぶ、2008年に最もスクリーンで輝いた映画」第9位

2016年
イギリスBBC主催の投票では、世界の177人の批評家が「21世紀の偉大な映画ベスト100」の第10位に選出した。
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