desperadoi

ノーカントリーのdesperadoiのレビュー・感想・評価

ノーカントリー(2007年製作の映画)
5.0
追う者と追われる者がいる。銃弾が放たれ、死体の山が築かれる。
ストーリーは至ってシンプルだが、それを描き出すコーエン兄弟の演出も極めてストイック。セリフや劇伴は大胆なまでに削ぎ落とされ、映像と音でキャラクターの置かれた状況・思考を語るそのスタイルは、観る者の視覚と聴覚を否応無く研ぎ澄ます。
ハビエル・バルデム演じるアントン・シガーはその風貌もさる事ながら、使用する武器の発射音及び形状が独特だ。もしそれが他の映画で見慣れた/聞き慣れたようなものであれば、あれ程恐ろしい存在には感じなかったはず。
映像面ではロジャー・ディーキンスの功績に触れずにはいられない。彼の捉える陰影に富んだ映像は、目を背けたくなるような暴力的なシーンですら美しさを感じさせる。中でも水を持って戻ったモスがメキシコ人たちから逃げるシーンと、モーテルでのモスとシガーの攻防は白眉。黒々とした闇が場面をよりドラマチックなものにしている。アカデミー賞ではノミネートに留まったものの、彼のベストワークだと思う。
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