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ノーカントリーのYYamadaのレビュー・感想・評価

ノーカントリー(2007年製作の映画)
4.1
【戴冠!アカデミー作品賞】
第80回 (2007) アカデミー4部門受賞
 (作品/監督/助演男優/脚色)

〈見処〉
①コーエン兄弟が描く「不条理の世界」
・原題『No Country for Old Men』は、19世紀の『ビザンティウムへの船出』という詩の一節から引用。本作終盤で保安官演じるトミー・リー・ジョーンズの嘆きさながら「調和のとれた古き良き世界は失われ、老人たちが知る世界はもはやない」を示唆。
・本作は1980年のアメリカ中西部とメキシコ国境を舞台とした、麻薬取引の大金を巡る執拗な追跡・殺戮劇で、コーエン兄弟作のなかでもっとも暴力的。
・作中の音楽はほとんどなく、次に何が起きるかは画面以外の情報を得られない。「バイオレンス」を通り越し「スリラー」に近く、アメリカではR指定にて上映。
・中心人物の保安官(トミー・リー・ジョーンズ)、殺し屋(ハビエル・バルデム)、逃走犯(ジョシュ・ブローリン)の3名は1度も顔を合わせず物語は進行。主人公の保安官は最も出演時間が短く、結局何もしていない。大いなる不条理。

②「圧倒的な悪」殺し屋シガー
・ハビエル・バルデム演じる「シガー」は、人間の情を無視した冷酷無比な殺人鬼。対話よりもコイントスの結果を重視し、牛を屠殺器具「キャトル・ガン」を武器に破壊活動を行う。
・「感情なし」「七三分けの奇妙な髪型」「圧倒的な悪」に『スター・ウォーズ』EP.4の「ダース・ベイダー」を彷彿とさせるのは自分だけだろうか?
・主演の保安官よりも登場時間の長いハビエル・バルデムが、アカデミー助演男優賞に選ばれたのも納得の怪演。

③私的解釈…なぜ作品賞に選ばれた?
・対抗馬は同時期に同エリアで撮影された『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』。
・同作未鑑賞にて比較評価は出来ないが、傑作の呼び声高い『ファーゴ』の後押しを受けての受賞だったのでは?

◆アカデミー作品賞 受賞作の中の
 本作のポジショニングは …
★★★★☆ 芸術性
★★☆☆☆ 社会風刺・メッセージ
★★★★☆ ストーリーライン
★★★☆☆ 革新性
★★★★☆ 演技・演出

★★★★☆ 総合評価 (独断と偏見)
・コーエン兄弟ブランドさることながら、光陰を巧みに使い分けた画面構図は素晴らしく、キャラクター描写も秀逸。
・定期的に再鑑賞したい「中の上」作品。
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