SSDD

ライダーズ・オブ・ジャスティスのSSDDのレビュー・感想・評価

4.2
■概要
自転車が盗まれ、車も故障したため電車に乗車した娘と母親。
解雇され電車に乗り、たまたま席を譲った男。
座っているギャング風の強面の男。
一口食べたサンドイッチと飲み物を捨て、電車から降りた男。

様々な人間が居合わせた電車が事故を起こした。皆偶然居合わせただけなのか、偶発的な事故なのか…事故被害者の遺族の軍人が、様々な人間と犯人を追う復讐劇が始まる…。

■感想(ネタバレなし)
なんだこれは、なんだこの不可思議な世界観と独特の話は…。
軍人の復讐劇と聞けばオーソドックスな作品に感じるが、本作は唯一無二の印象を受ける寓話的作品。

話の起点となる事故にはギャングの事件に関わる証人が居合わせたことで、偶発的な事故とは思えず統計学者が疑問を持ち、警察に相手にされなかったことから遺族と対話を始めるという変わった始まりだ。

もしあの時あんなことがなかったら、もし時間が早かったら、遅かったら…。
すべての出来事にはifを考えてしまうことがある。

そんなifを突き詰めた先に何があるのか、数値的根拠という神話は納得感があるが、本質的なことは数字では表せないというようなメッセージ性のある作品でした。

途中声を出して笑うシーンが多くコメディというかシニカルで一癖ある作品で、登場人物にまともな感性がある人間がほぼいないせいで、途中からギャングの方がステレオタイプでまともに思えてくるカオスな映画でした。

アクション映画として構えて観てください。期待に全く反しますが後悔はしないと思います。













■感想(ネタバレあり)
・終わりと始まり
急にブラックなディズニーのような、ファンタジー風に始まる映像。
おじいさんと孫がクリスマスのプレゼントに青い自転車を求めるが、自転車屋は窃盗犯で自転車を盗んで用意する。
盗まれたせいで軍人の母子は電車に乗ることになる。

もし自転車を欲しがらなければ、赤い自転車にしておけば巻き込まれなかったのだろうか。

これは考えても仕方がない。全ての出来事には独立して流れがあり、それぞれの事象の原因を追うとこはできないと統計学者は言う。これが真理。

誰かが何かを望めばその過程があり、結果がある。その結果しかしらなくても物事には過程があるということ。
だから起きたことに思い悩むのは無駄という教訓。

・数字は嘘はつかないが人間が数字を読み間違える
マーケティング関連の会社にいたのでよくわかるが、人は自分の結論付けたいデータを切り出して使う。
期待と異なる結果が出ても都合良く捉えたり、見たいように見るもの。
統計的におかしいと疑うのも、一致率の誤差を補正するのも結局は人間だ。

本当にただの偶発的な事故だったのを、誤ってギャング団を壊滅させるに至るというシニカルなストーリーに仕立てるというのは酷く誇張的ではあるが、人間の本質をよく描いている。

・問題を抱える人間
大きな悲しい出来事に遭遇した場合、人は寄り添ってもらえた方が良い。

かなり奇妙なコミニティーが形成され、最後には事故で娘を亡くした統計学者、虐待のトラウマを抱えるハッカー、なんでも器用にこなすイジメのトラウマを持つ顔認証系技術者、人の話を聞かない暴力的な軍人、人に売られた男娼、母親を亡くした娘と彼氏と様々なキャラクターが魅力的に描かれていた。

・総評
まさか本当にただの偶発的な事故というオチで、復讐劇はどちらかといえばギャング団という不思議な作品。
ガイリッチー作品のようでもあるが異常に泥臭く、スタイリッシュではなく人間の本質とヒューマン要素が強い作品で私の中では類を見ない作品。
これは良作に出会えた。
SSDD

SSDD