ぶみ

20歳のソウルのぶみのレビュー・感想・評価

20歳のソウル(2022年製作の映画)
3.0
今も、君の音楽で、前を向ける。

中井由梨子が上梓したノンフィクション『20歳のソウル 奇跡の告別式、一日だけのブラスバンド』を、秋山純監督、神尾楓珠主演により映像化したドラマ。
船橋市立船橋高校出身で、同校野球部応援で使われる「市船soul」を作曲し、2017年に20歳で逝去した浅野大義と、吹奏楽部員等の姿を描く。
原作は未読。
主人公となる浅野役を神尾、吹奏楽部員を佐野昌哉、前田航基、若林時英、大学時代の交際相手を福本莉子といった若手中心のメンバーが演じている中、吹奏楽部顧問を演じた佐藤浩市始め、尾野真千子、平泉成、高橋克典、石黒賢といったベテラン陣がしっかりと脇を固めている。
そんな中、吹奏楽部の部長を演じた佐藤美咲が、実際に2019年度の部長だったというのは驚き。
物語は、主人公の高校時代から20歳で逝去するまでの数年間が描かれるのだが、青春映画にありがちな、こちらが見ていて恥ずかしくなるようなコテコテの恋愛模様がなかったのは好印象だったものの、そうなると逆に俳優陣の無駄遣い感と、下手な演出が目立ってしまうことに。
ただ、後半はそれを巻き返すように、彼と、彼を取り巻く人々の様々な感情が動き出すとともに、結末がわかっているが故の切なさが募るものとなっている。
また、何を隠そう、私は小学校の頃、学校の金管クラブで主人公と同じトロンボーンを吹いていたため、演奏シーンは必然的にテンションが上がってしまうことに。
中心となる俳優陣の若さを埋めるように、佐藤や尾野等のしっかりとした演技でバランスが取られており、実話ベースであることからセンセーショナルな出来事は起きないものの、生きていることの幸せを伝えるには過不足ない仕上がりとなっている一作。

ベクトルを人に向けるな、自分に向けろ。
ぶみ

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