MasaichiYaguchi

ボディ・リメンバーのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ボディ・リメンバー(2020年製作の映画)
3.5
小説、演劇、映画等は虚構で成り立っているが、その虚構の中にある寓話や寓意を通して真理やテーマを浮かび上がらせるものだと思う。
舞台でも活躍する俳優・山科圭太さんの初監督作品では、ファム・ファタールのようなヒロイン・ヨウコを巡る男たちの、虚構と現実、夢が錯綜する異色サスペンスが繰り広げられる。
ハルヒコがヨウコをモデルに執筆する小説が作品のベースになっているが、小説の内容なのか現実なのか、ヨウコ、アキラ、ジロウ、ハルヒコ、その恋人のリリコの夢なのか想像なのか、その境界線が朧気で観ている我々も登場人物同様に作品の迷宮に誘われる。
この主要キャストは山科監督同様に主に舞台で活躍する俳優たちで、生の舞台とスクリーンとフィールドの違いはあれど、存在感を発揮して夫々のキャラクターを演じている。
だからキャストたちの演じる舞台も何処か演劇的なものを感じさせ、アジア的なものやヨーロピアン的な要素がある。
この作品はストーリーを追い掛けるよりも、キャストたちの演技によって作り出される世界観、その愛の迷宮とも呼べるものに観客を惑わせるサスペンス映画と言えるかもしれない。