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鬼平犯科帳 血闘のトモのレビュー・感想・評価

鬼平犯科帳 血闘(2024年製作の映画)
4.5
池波正太郎生誕100年企画、時代劇パートナーズ制作、時代劇専門チャンネル開局25周年作品の「踏襲しながらアップデートする」本気の時代劇第2弾

「仕掛人・藤枝梅安」の劇場版2部作に対し「鬼平犯科帳」はSPドラマ→劇場版→連続SPドラマの流れ。時代劇専門チャンネルという激渋チャンネルに加入しない限りひとまずは網羅する事が出来ないという本気のシリーズ

「悪を知って下道に堕ちるか、悪を知って下道を憎むか」

悪の道理を知る男が悪を断つ。入り口はお馴染みの時代劇だがラストに至るまで終始纏わりつく因と縁。それらを背負いながらも翻弄されることのない確固たる信念を持った生き様こそが長谷川平蔵なのだろう

松本幸四郎さん鬼平がとにかくかっこいい。単独での立ち回りも多く感情ののった殺陣が凄く見応えがあった。過去を暴露されそうになると気まずそうな表情をする人間味のある場面もとてもいい。悪を斬るだけではなく更正させようとする独自の正義感も

そんな平蔵の若かりし頃を演じた市川染五郎さんもかっこいい。この描かれていない空白にどの程度の葛藤があったのか想像するのも一つの楽しみ。感情が先行してしまう向こう見ずな所は変わってないみたいだけど

他キャスト陣は言わずもがなで全員良かった。書き出すと止まらなくなるのでやめておきます(因みに火野正平さんの名前を付けたのが池波正太郎さんだったのが驚き)

火付盗賊改方の大立ち回りをもっと見たかった気もするけど作品の構成上仕方ないし最低限はあったのでSPドラマでの活躍を期待してます

「仕掛人・藤枝梅安」に続き全ての脚本を担当する大森寿美男さん、相変わらず抜かりがなくて細やか。良くも悪くも因と縁、後半にかけての畳み掛け積み重ねが特に素晴らしかった

池波正太郎先生と言えば美味しい料理。今回も藤枝梅安に引き続き料理監修が「分とく山」総料理長で本当に美味しそう

今回劇場版の「仕掛人藤枝梅安」「鬼平犯科帳」を観てメイキング等を観て本気で時代劇の事を考えているプロの方々と演者が多くいるのを知りました。子供の頃から親の影響で時代劇を好きになった自分としては歴史時代ものの映画は沢山観てるけどいわゆる「痛快娯楽時代劇」というものを映画館で観たのは初めてでこんなにも粋で高揚するものなのかなと。ツッコミ所があるのが時代劇、スカしてたたき斬るのではなくて温かい視点で見守ってもらってその命を絶やさないで欲しいなと願うばかりです
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