しゅう

仕掛人・藤枝梅安のしゅうのレビュー・感想・評価

仕掛人・藤枝梅安(2023年製作の映画)
3.9
時代劇好きで池波正太郎愛読者ではあるが、今回の映画化には余り興味が湧かず。

"時代劇、新時代"と銘打った割には、既に何度もテレビで映像化された『藤枝梅安』『鬼平犯科帳』を持ってくる保守的な姿勢に鑑賞候補には入れていなかったが、Filmarksでの意外な高評価にもしやと思い映画館へ。

令和現在の役者・スタッフで創り上げ、現代の観客に提示する時代劇映画として最良の仕上がりになっていたと感じる。

豊悦梅安は意外にもしっくり来るし、何よりその長身を活かした身体能力の高さに説得力がある。

相棒彦次郎を演じる愛之助にも色気があるから、過去の映像化作品と比べても二人が醸し出すBL空間が心地よい。

それでいて、原作の持つ男性中心視点を微妙に修正してもいる。

池波作品で良く語られる、「女は怖い」「女は魔物」という言葉。実のところ女を人形として欲望のままに従わせるのが当たり前と考えている男が、いざ女の自立した欲望に直面して怯み悪と断罪する身勝手な言い分でもある。

天海祐希演じる梅安生き別れの妹お吉を、単なる欲望に塗れた下衆ではなく、自分をモノとして虐げてきた男社会への復讐として周囲の人間を利用し尽くす確信犯的な悪女として描き直した処に、今作の価値がある。
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