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仕掛人・藤枝梅安のpenのネタバレレビュー・内容・結末

仕掛人・藤枝梅安(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

基になった原作の話を読んだが、概ねその内容に沿っており、それを中心に複数のストーリーを絡めていた。殺しの依頼をする側・狙われた側の人物像を通して人の心の汚さ・欲深さを掘り下げ、こういう道に進まなければ生きていけなかった時代の闇が背景にあることを窺わせる。それは仕掛人である梅安や、相棒の彦次郎もまたそうであったという繋がりを感じさせた。

豊川悦司と片岡愛之助の両氏の二人組は、ちょうど良いバランスが取れている。
豊川氏は妖しさと胡散臭さが同居しているのが個人的には魅力だと思っているのだが、その良さが充分に出ていた。一方の片岡氏は、対照的に実直な雰囲気が作中では感じられる。
二人が鍋や粥を食べながら話す場面やのんびりしている場面は本作で数少ない気の休める要素だが、互いにいつ死んでもおかしくないと思っているからこそ生まれる絆の強さが際立っていた。
重要人物を演じる天海祐希氏が見せる度胸、迫力、それらに隠された暗い影が印象深い。菅野美穂氏もそうだが、声の強弱がちゃんとしていて良い。

総じて役者陣は良くて、映像的にもちゃんとしたものを作ろうという姿勢は感じた。
街が広く感じられるようにする努力というか。数少ない殺陣を担当する早乙女太一氏が素晴らしいし、梅安との出会いの場面も好きだ。
仕掛の描写は外連味は敢えて排されていて、梅安が命を奪う手技を丁寧に見せているのが良かった。力技も見せるのは驚いたが。
音楽はこれでもかというほどに川井憲次サウンドが炸裂していて、まるで押井映画のようである。

ただ、一部描写は省略するなど他に見せようがあった気がする。その懸念は後編へ繋がるポストクレジットシーンでも感じられ、どうなのだろうと思ってしまう。
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