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仕掛人・藤枝梅安のIDEAコメント休止中のレビュー・感想・評価

仕掛人・藤枝梅安(2023年製作の映画)
4.1
「るろうに剣心かっ!」
作中のとあるワンシーンでの私のツッコミである。
いきなりのワイヤーアクションに思わず笑いが込み上げた。

いやいや、実に真面目な作品なのだが。

日本画にしたら映えそうなシーンばかりの美しき風景に心を奪われる。色味を抑えて落ち着いた雰囲気を巧みに演出し、終始ハードボイルドな作風を崩さない。
細部まで精緻に作られたこの時代劇、劇場での鑑賞の価値は大いにある。TVのスペシャルドラマとは一線を画す風格が漂っているのだ。

劇伴は川井憲次氏。
作品に寄り添う透明度の高い音楽が全体像の輪郭を彩り華を添える。
精緻な映像、透明度の高い音楽…相乗効果で一段も二段も素晴らしい作品に感じられる。

メインキャストも秀逸。
梅安役、豊川悦司の静かに湧き上がる色気。
彦次郎役、片岡愛之助の信頼できる相棒感。
また、梅安宅のお手伝いさんを演じる高畑淳子のコミカルさはハードボイルドな作風においての気の緩めどころであり緩急が付き大変良い。

「仕掛人って何?」
「過去シリーズを観たことないんだけど…。」
心配ご無用!!
独特なキーワードについては作中で説明あり、仕掛人シリーズを知らずとも世界観にどっぷり浸れる。


観終わって…。
全編シブくて硬派な作品だったにも関わらず、一番印象に残った台詞は美味い飯をかっくらった彦次郎のこの一言。
『こいつぁ、美味ぇや!』
何回も言わんでくれ。笑っちゃうから。

私は今作の評価としてこの言葉を贈りたい。
『こいつぁ、巧ぇや!』