くまちゃん

バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版のくまちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

ドラマ版のシャーロックは原作での語られざる事件「アントールドストーリーズ」をパスティーシュと言う形で拡げたものであり、現代に舞台を移した類似作品は世界中にある。

だが、なぜ日本なのか?

劇場版公開が決定した時点で感じたことだが、絶対バスカヴィル家ではない。

なぜなら現代の日本が舞台の今作においてバスカヴィルさんなどいるはずがない。そもそもシャーロックさん自体が存在しない。

「蓮壁家の犬 獅子雄劇場版」

シャーロックと大体的にタイトルに入れるのではなく、あくまで翻案としてシャーロック・ホームズを匂わす程度が丁度いいのかもしれない。

靴が紛失したり、犯罪の根底に資産家の闇があったり、相棒若宮に現場を託し獅子雄が単独行動をしたりと原作を彷彿とさせる場面があったのは良かった。
犬というモチーフに対し、狂犬病という発想も惹かれるものがあった。

ただ、その狂犬病ウィルスを闇サイトで買ったと言われてしまえば推理のしようがない。
せっかくのクローズドサークルが。
魔犬を模したドローンもチープ以外の何物でもない。そのクオリティは「恐竜神父」に勝るとも劣らない。

中盤の獅子雄のアクション場面は、事件とは直接関係がなく、物語に緩急をつけるためだけにとどまっている。

捨井遥人は必要だったのだろうか?
ミスリード用のキャラクターであることは明らかなため、誰もミスリードされない。
地震学者というのも天災まかせのラストありきな設定なため、そこまで重要じゃない。
地震の科学考証が甘いため、現実味がない。
捨井のディティールについて、
寝が暗く、対人能力も低く、誤解も招きやすいが、明晰な頭脳と鋭い観察眼を持っている。その上歪な程に愛情深い。同監督の「容疑者Xの献身」にて堤真一が演じた石神哲哉と酷似している。
捨井の行動は明らかなストーキングであり、それに対して「純愛」と評する獅子雄。やかましいわ!
ただ演じる小泉孝太郎の陰気な演技は彼のパブリックイメージとかけ離れたものであり、称賛に値する。

最初から最後までテレビドラマの呪縛から脱却できず、孤島に行って、一家の破滅を見届けただけの内容になってしまっているのが残念。
くまちゃん

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