Hiroki

バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版のHirokiのレビュー・感想・評価

3.0
最近配信に追加されたらしく「観たい」と真っ直ぐな目で訴えかけられたので一緒に鑑賞。
そーいえばこれテレビシリーズの映画化でテレビシリーズは観ていた事に気づく。
そもそもシャーロキアンな私としては“シャーロック・ホームズ”と名のつくものは、パスティーシュも含めできるだけ観るようにしている。
なぜなら文句を言うため!
観ないで文句を言うのはやはり良くないですからね。(もちろん良い内容だったら言わないですが。)

このシリーズはたしかThe Untold Tales(語られざる事件)という、正典(60ある長短編)には含まれないが物語中に示唆される事件、を原案にして作られたパスティーシュだったはず。
それなのに正典の1つであり、60の作品の中で4つしかない長編の1つであり、映像化される事が多い人気作の1つである『バスカヴィル家の犬』をここにきて使うなんて。
とか思いながら見始めたら、全く正典のバスカヴィル家の犬事件とは違う話だった。
“ダートムーア”とか“ベリル”とか要素だけを少し散りばめて「これで勘弁してください」みたいな感じもちょっと...
バスカヴィルといえばベネディクト・カンバーバッチ&マーティン・フリーマン版の『SHERLOCK』で、正典の内容を踏襲しつつ現代版にアレンジしていて見事だった。

まーパスティーシュだと思って正典は一旦置いておくとしても、なかなか内容的には疑問。
まず開始30分くらいで真犯人が誰かわかった。明らかに怪しい動きしてるから...本当のおとうさんなのかなーと思ったけど...
そして119分の中のだいたい半分の60分くらいから謎解きが始まる。
つまり60分くらい謎解きしてるのですよ。
犯行の動機の回想とか犯人が二転三転していくから無駄ではないんだけど、やっぱり謎解き部分て動きが極端になくなる。
だから『刑事コロンボ』や『古畑任三郎』みたいな倒叙トリックの一部の例外を除くと、長くなりすぎる事は映像化においてはデメリット。
だってやっぱりせっかく映像で見るなら、バッチバチに動き回ってアクションしてるホームズとワトソンをみたいじゃないですか!
あとはその方が演技力を隠せるというメリットもある。(いやメリットかはわからないがけども...)
ピーター・フォークや田村正和ならいざ知らず、映画館の大スクリーンなわけだしその方向にしておいた方が無難だったと思う。

瀬戸内海の島で冬とはいえ凍死って。
てかあれ冬だったのかすらわからなかった。
でももーそんな事言い出したらダメか...これは。

あと個人的にラストに犯人が死ぬことで仕方なかったみたいな終わり方が好きじゃなくて。
ちゃんと罪を償うという方向の方が好みなのでそこもちょっとね。(ただこれは正典の方もたしか犯人が行方不明=死を示唆しているオチだったのでなんとも言えないが...)

アクションシーンもおディーン様のチンピラとのバトルアクションが1回とあとは暗闇でのシーン、そして最後の地震のシーンとかなり少ない。
やっぱりせっかくスクリーンでやるのだから、そこらへんのサービスは欲しかったなー。元と話を変えるならなおさら。
これならテレビSPでよくないですか?という。

そしてこれはタイミングの問題なんだけど、広末涼子が出てくるたびに「あっ」ってなった。夫と仲睦まじい役だったのに、いやこれは裏切りあるぞって勝手に思ってしまった。

テレビシリーズってそこまで悪くない印象だったのになんでこんな事になってしまったと思ったら、脚本がテレビシリーズのメイン脚本の井上由美子じゃなくてサブの東山狭だった事に気づく。(井上由美子は脚本協力に。)
まーそもそも語られざる事件を原案にしようと考えたのも井上由美子だったみたいなので、映画化はそれではなく正典をやるみたい所でいろいろあったんですかね...
大人の世界は難しいですねー。
ただここは結構大きな違いだったかも。

お口直しにベネディクト・カンバーバッチ&マーティン・フリーマン版のSHERLOCKでも観ようかと思います。
このシリーズもそろそろ新作をお願いしたい!

2023-49
Hiroki

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