とにかくイーストウッドが優しい男だとわかるドキュメンタリー。自分はそこまでイーストウッド監督作をおさえておらず、かなりネタバレも多く半目で見ていたが、俄然観たい欲がそそられた。
イーストウッド作品ってそもそも、あまりに控えめな演出ではないだろうか。彼は脚本を第一に考え、その次に役者を重んじる。カメラワークや編集といった技巧は、些細で気づかれない。映画らしさは奥ゆかしいほどに隠れており、イーストウッド自身の人間性ともリンクする。また、ジャンルを選ばず多作であるというのも、彼の寛容さが伺える。常にシリアスに人々を見つめようとしている。ただ、彼はかなり政治的イデオロギーを潜ますのが上手いので、単に人間ドラマではないというのは注意したいところだ。
にしても多作である。ここ最近もまだまだ映画を撮影しているし(現在90歳！)、一年に二本撮ることもしばしば。これはインタビューからも分かる通り、彼のスタッフやキャストへの気配りや、良くも悪くも手際よくやる撮影スタイルが要因だろう。また監督だが、かなりキャストスタッフを信頼しきいっており、この間見たキューブリックとは全く対照的だなと思った笑。
ジャンルを超えて、手際よく毎年のペースで映画を公開する90歳の元俳優の映画監督がどこにいようか。あぁいういい歳の取り方をしたいと思った。
