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Ribbonのpenのネタバレレビュー・内容・結末

Ribbon(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

新型コロナウイルス感染拡大の為に卒業制作展中止。無慈悲なアナウンスが校内を流れる中で、美大の学生たちは自ら作った作品を自分の手で壊していく。そんな姿を見ながら、主人公のいつかは自作を壊すことなく自宅に持ち帰ろうとする。その時に響く心の声「重たい……」その重さは持って帰ろうとしている大きな絵の重さだけなのか。もやもやの詰まった心の重さなのか。

描かれているメッセージはストレートでシンプルで、それ故に強い。だが観ていて堅苦しくならないのは、同じ美大の友人や、一人暮らしのいつかを訪ねてくる家族、そして公園で出会う人との関係性を話の中心に据えながら描いているからだと思う。
ソーシャルディスタンスというが、どれくらいが適切な距離なのか。この状況が始まった当初は分かりかねた距離間の測り方。それが作中の距離感を探る関係性の物語とも重なっていく。
バス停で別々の方向を見てた二人がやがて同じ風景を見る、公園での変な出会いが大切なものになる……ぶつかりあったり、探り探りだからこそ、再度獲得出来る関係性があることを感じさせた。

本作はよく反転する。
RibbonはRebornにもなるというが、ゴミとされたものはゴミじゃなくなり、公園は別の出会いに転じ、一人暮らしのゴミ屋敷は大切な表現の場になる。
(さすまたというか、得物がああなるとは……)そんな反転が印象深い作品だった。

作品の目玉になってるリボンだが、最初はなるほどなーと思ってたところ、リボンが次第に漂うというより流れ始めてから、一々印象深い。特に慟哭の際のリボンに驚いた。

関係性というと役者同士のやり取りが重要になるが、友人役の山下リオや妹役の小野花梨がとても良かった。特に後者は出てきた途端に停滞していた空気を破り、作品のスピード感が上がっていく(その前の両親との会話が停滞の理由で、狙い通りならまんまとハマってる)。渡辺大知とのぎこちない会話も好き。
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