矢吹健を称える会

Address Unknown(原題)の矢吹健を称える会のレビュー・感想・評価

Address Unknown(原題)(1944年製作の映画)
4.4
 米Kit Parker Filmsが出しているBlu-rayボックス『Noir Archive 9-Film Collection』に入っていた作品だが、これは傑作です。凄い美術、凄い撮影(ルドルフ・マテ!)、凄い演出が72分につめこまれている。

 オープニング、街を見下ろしているのでかなり高い場所にあるはずの邸宅の庭園で、主人公とその友人が会話をしている。この時点で意表を突くショット(すごく細かいカット割り)が連続し、本作がただならぬ作品であることをすでに予感させる。そして主人公の息子と親友の娘が奇妙な位置にある扉から登場。この空間設計はいったいどうなっているんだ。
 役者志望のK.T.スティーヴンス(映画監督サム・ウッドの娘とのこと)が主演を務めることになる演劇の異形なセットも壮観である。暴徒が幕を切り裂くシーンの禍々しさから、逃亡中の超現実的なイメージ、そしてようやく辿りついた屋敷での呆気なさすぎるやりとり。ここでの扉の演出がラストで反復されるのもたまらない! 「扉」の映画として、それこそルビッチの諸作に匹敵するように思う。
 途中、手紙のくだりがちょっと冗長に感じたが、結末のキレのよさでおつりがくる。傑作!