keith中村

デッドリー・イリュージョンのkeith中村のレビュー・感想・評価

4.5
 これは意外とよかった。かなりの拾い物と言ってもいいかもしれない。
 
 第一幕のセッティングで「ああ、このパターンね」となり、第二幕の展開も「見た見た。こういうの最低100本は観たわ」と思って、かなり力を抜いて観ていた。
 解決篇の第三幕で「生い立ちに迫る展開」になっても、すべて既視感しかない。
 
 と思ったら、その後の展開が素晴らしすぎた。
 「いつものパターン」だと、ヴィランはただのサイコパスで、「ぶっ殺してハッピーエンディング!」になるじゃないですか。
 でも、グレイスちゃんはそこが全然違うくって、見てて本当に可哀想になってくるのです。
 「こんな子、殺せないよ~。そんなことしたら、後味悪すぎるよ~」ってなってたら、そこへは話を落とさない。
 
 翻って、予想もしてなかった優しいエンディングを迎えるのですよ。
 これは泣いた。サイコものでこんな優しい終わり方されたら泣くわ。
 
 だいたい、こういうジャンルもので、エンディングが長いのは駄目な映画が多いのですよ。
 でも、本作はその長さこそが嬉しい。
 
 楽しい家族を描いて~、親友への贈り物を仏前(?)に捧げて~、病院も訪ねて~、「よし、ここで終わりだ。病室からカメラが後退してフェードアウト! で決まり!」と自分の中の最高パターンを先読みしてたら、まだ続くんだ。
 病室出ぇの~、病院ティルトアップしての~。
 「いや、そこはもはや蛇足だろ!」と思ってたら、最後に「THE END」って最近なかなか見ない文字を出してくれたんで、ニコっとなって、さらに評価があがりました。
 青空で終わってくれたので、文字通り晴れやかな気持ちになりました。
 
 ただ、ね。「THE END」の文字にオープニングと同じ処理掛けるのはやめてよ。あの、「セブン」的なやつね。
 そんな不穏なのいらない。晴れやかに終わってよね。
 だから、そこだけ減点しときますね。

=============
 その「蛇足」について追記しておこう。
 あれは何パターンかに解釈できるオープン・エンディングでしたね。
 こういう場合作り手の「正解」はないことが多いので、みんなでワイワイ語り合って楽しむこと自体が「正解」ですね〜。