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煙突の見える場所のokawaraのレビュー・感想・評価

煙突の見える場所(1953年製作の映画)
4.3
冒頭、お化け煙突を空撮で捉えたカメラは、その関心を東京の周縁に向け、その近郊の村からひとつの家屋を選びとる。早朝の家屋の1階を眺めたカメラは、まもなく階段を上がろうとしたとき、はたと足を止め、そろそろと後ずさりしてしまう。それはすなわち、あたかもこの映画の唯一の秘事はこの階段の先にあるのだとささやく艶かしい告白であり、ならばこの時点でこの家屋の2階の官能性が決定的に約束されたと考えて良いはずである。
だから官能とは無縁であるはずの1階で中年夫婦が抱きあったとき、私もまさに高峰秀子と同じように驚きの念を抱いたし、いっぽうの2階の若い男女がついぞ肉欲を示さぬまま、終わることのないジャンケンでそれぞれの一日を始めたとき、これまたたまげてしまった。
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