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うみべの女の子のrichardのレビュー・感想・評価

うみべの女の子(2021年製作の映画)
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俺が嫌いなのはそういう自分勝手な欲求を満たすために他人の内面に土足で踏み込んでくる奴。自分の腹黒さに無自覚で平然と生きてられる奴が世の中多すぎるから、俺等は生きてるだけで息が苦しいってことをお前は一瞬でも想像したことある?
磯辺お前はよくこんな長台詞をスラスラと言えるよな。練習でもしてたんか?

責任とか軽く言っちゃう中学生の、宙ぶらりんな足もと。
田舎特有の狭い社会と、めんどくさい上下関係。
くすんだ空気と、湿り気を帯びた視線と肌。

中学生なんてそんなもんだよな、っていうのがつまった作品。
大人にも子供にもなりきれない。地元の先輩の顔色ずっと伺ってなくちゃ生きていけない。どんなに恥ずかしいことを経験して、忘れてしまいたいくらいの過去も、ちゃんと胸に抱えて、押し込んで、もう出てくることのないように、でもときどきそっと、ぼんやり眺めては、黒く塗りつぶそうとする。そうして新しくできた、自分を好きだと言ってくれる相手の前では、まるで初めてみたいな顔をしてセックスする。そんな、残酷な世界。それは今思えばあまりにもちっぽけである。

なんだかんだソラニンに引き続き、ちゃんと成功しているのでは?と思う実写化のひとつ。原作好きだけど、配役完璧でしょ。小梅ってこうして映像で見るとマジでバカっぽいっていうかバカで頭空っぽだな〜って思う。そう思わせるのがうまい石川瑠華ちゃん。意外と村上淳出てたりするし、ヤバい鹿島を旺志郎君がやってるのもなるほどって感じがする。はっぴいえんどもさることながら、world's end girlfriendがいい。
浅野いにお好きだったんだよなあ。今も好きだけど。もうあんまり読めなくなってしまったのは、自分が大人になってしまった証なのか、まだまだ大人になりきれないがゆえなのか。

はじめることのできなかった恋は、終わることもできない。
きみが好きだというぼくは、それはきっと、ぼくじゃない。
ぼくじゃないよ。
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