けーすけ

先生、私の隣に座っていただけませんか?のけーすけのレビュー・感想・評価

4.0
漫画家の佐和子(黒木華)は連載していた漫画の最終話を仕上げ、次の連載について考えていた。そんなある日、母が怪我をしたと連絡が入り、同じく漫画家である旦那の俊夫(柄本佑)とともに実家でしばらく過ごす事にしたのであった。
実家にいる時間を利用し、自動車免許を取得するため教習所に日々通う佐和子であったが「新作のアイデアが浮かんだ」と言い漫画を描き始める。内容が気になった俊夫はそれを盗み見てしまう。そこには佐和子の担当編集者である桜田千佳(奈緒)と俊夫の不倫、そして佐和子と教習所の教官(金子大地)との淡い恋が描かれていた。これは創作なのか、それとも・・・






TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2018、準グランプリ受賞作品。
不倫というテーマだとドロドロしたものをイメージしがちですが、本作は描き方とキャストの力もあいまってか重くもなく、とても楽しんで観られました。


佐和子が描く漫画のネーム(下書き)はまるで実際の出来事のようで、どこまでが本当なのか、それとも全て創作なのか?と俊夫とともに観ている側も翻弄させられます。俊夫と千佳は実際に不倫してるけど、佐和子と教習所の教官の関係は果たして事実なのか?

先の読めない展開でもあり、何が現実で何が虚構なのか。サスペンス的要素もありながら夫婦の物語でもあるという新感覚な映画体験でした。

タイトルでもある『先生、私の隣に座ってくれませんか?』の意味合い、登場人物の設定からあれこれ考えてたのですが、使いどころには「ヤラレタ…!」となりました。
あと、漫画のイラストも好みだったのでこの連載読んでみたい!笑



佐和子を演じた黒木華。一本芯が通った落ち着いた雰囲気と、たまに何を考えているのか分からない感じの演技がバシっとハマっておりました。

そして俊夫役の柄本佑。人当たりがよくて、不倫しているのにどこか憎めない存在感の演技がめちゃめちゃよかったです。妻の実家に行った時の義母とのやり取りとか飄々とした佇まい、彼が主役と言ってもいいかと思います。とにかく終始素晴らしかった。

佐和子の母親を風吹ジュンが演じておりますが、これまた良いお母さん。色々と察しながらも程よい距離感を持ったお芝居で物語のアクセントになっていました。

そして編集者の桜田千佳を演じた奈緒の小悪魔的な感じがドストライク。担当編集とはいえ不倫相手の妻の実家にまで突撃したり、自身の不倫が描かれているであろう漫画にサクっと「これ連載いけますよ!」という神経、ああ恐ろしい。笑

教習所の教官・新谷を演じたのは金子大地。真面目な雰囲気と整った顔が映えますね。この先注目の一人です。



佐和子が行った行為、人によって色々な見方ができると思うのですが、個人的には「愛のある復讐だなあ」と感じました。
結末には「うそぉ…」となる事間違いなし。めちゃめちゃ面白かったです。


2021/09/01(水) オンライン試写にて視聴
[2021-073]
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