てっぺい

先生、私の隣に座っていただけませんか?のてっぺいのレビュー・感想・評価

4.0
【匂わせる映画】
人物の心情を言葉でなく、漫画の台詞や映像表現で匂わせる映画。穏やかな映画のペースに反して、1秒も見逃せない。ラストのどんでん返しや、節々のコミカルさ、現実と妄想が錯綜する面白さも。
◆概要
「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2018」準グランプリ受賞作品の映画化。
監督:「ANIMAを撃て!」堀江貴大
出演:黒木華、柄本佑、金子大地、奈緒、風吹ジュン
◆ストーリー
漫画家・佐和子の新作漫画には、佐和子の夫・俊夫と編集者・千佳の不倫現場がリアルに描かれていた。読み進めていく中で、恐怖と嫉妬に震える俊夫は、現実と漫画の境界が曖昧になっていく。

◆以下ネタバレ

◆匂わせ
車内で俊夫のスマホを目で追い続ける佐和子。不倫がバレたと気づいた俊夫から垂れる尋常じゃない汗。2階で戯れる俊夫と千佳の声を聞く母の後ろ姿。この映画は、言葉で直接語らず、映像で人物の心理を描写しているのがいい。これってある意味映画の醍醐味な気がする。黒木華自身から放つ穏やかなオーラで、なんともゆったり見てしまいがちだけど、本作は逆に見逃せない映像表現がふんだんで、1秒も見逃せない。妄想と現実を照明の色で分けていたり、実家を行き来する時の車とゲートの構図も何度も出てきたので、きっとあれにも監督の狙いがあると思う。(けど読み取れず…)
◆どんでん返し
これは男のサガなのか。不倫を告白して円満なラストと信じてしまった自分が恥ずかしい笑。佐和子のあのビンタのように、不倫した男にハッピーエンドなどない、と突きつけられたラストのようで、なんだか必要以上に心を締め付けられた笑。ラストカットで助手席が映らなかったのが少し気になるけど、照明の前述の例でいくと現実のものなので、佐和子の作戦は大成功、という解釈でいいと思う。
◆コミカル
第二話を読み終え、違う違う!とリアクションする俊夫。最終話を読み、うそーん、とリアクション。どちらも劇場で笑いが沸き起こっていた笑。脚本での俊夫のキャラの落とし込みと、柄本佑の演技力の賜物だと思う。漫画を題材にした本作は、まさにコミカルさも際立った秀作でした。
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