風神

クレッシェンド 音楽の架け橋の風神のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

ムービープラス放送分を録画して鑑賞。

世界で一番解決が難しい問題と
言われている、
パレスチナとイスラエルの問題。
その2カ国からの選抜メンバーで
平和のためのコンサートが企画される。

アメリカには作れない映画。
ネタニヤフに観て欲しい。
ハマスの連中にも観て欲しい。
アメリカのシオニスト達にも
観て欲しい作品。

宗教と政治と歴史が
その身体に擦り込まれて
誰もが被害者でもある
パレスチナとイスラエル。
その原因を作ったイギリスにも
作れない作品。
だが、制作国のドイツもかつて
ナチズムに取り憑かれイスラエルの
元となるユダヤ人を殺していた国家。
歴史や血筋を辿れば
誰もが加害者なのかもしれない。

モデルとなった管弦楽団の
ウェスト=イースタン・ディヴァン
管弦楽団はいまだに活動してるらしい。
イスラエルとアラブの人達による
楽団らしいから、今作ほどの
直接対決ではないにせよ
相当大変な思いをしているとは思う。

パレスチナ側の中心人物のレイラ。
曽祖父が住んでいたところは
イスラエルに占拠された。
イスラエル側の奏者も
親戚がパレスチナ人に殺された。
指揮者であるスポルクの両親も
ドイツ人医師としてユダヤ人の虐殺に
関わっており、ナチの息子という
十字架を背負って生きている。

誰もがなんらかの想いがある。
それでも
お互いの怨みや怒りを乗り越えて
「音楽」という共通言語で
美しいハーモニーを目指す。

途中で演奏された
ドヴォルザークの「新世界より」第2楽章。
故郷チェコを離れ新世界のアメリカでの
暮らしの中で故郷を想い作られた曲。
彼等の状況とマッチして
心情を想像すると泣ける曲選。
そして、ラストのボレロ。
ガラス越しで向かい合って
お互いの音を聴いて演奏される姿。
後ろに映るコンサート中止のニュースと
オマルの映像。
共通言語である音楽、
政治とは無関係の音楽、
彼等が表現したかった音楽が
こんな形で終わる切なさと
最後の集大成としての演奏。
ただ、ひたすらに泣きました。

市民レベルであそこまでお互いを
憎み嫌っているんですね。
自分が思っている以上でした。
それ故に、お互いが相手を個人として
認めて本音で話す姿、この少人数ですら
とても難しい事だったが
これを国家レベルで出来るのか?

子供や孫に託すんではなく
今、自分から変えなくてはという考え。
変化から逃げずに立ち向かい
皆で美しい演奏ができていたからこそ
あのラストは切なすぎる。

2024-50
風神

風神