これもBlu-rayボックス『Noir Archive 9-Film Collection』に収録された一本。全く期待していなかったが、なかなかの珍品で、一見の価値はある。
事故に遭い病院に運ばれてきた身元不明の美女。女のポケットに入っていたメモには5人の男の名前があり、そのうち1人がたまたま有名記者だったことから、この男が呼び出され女が何者なのかを探ることに。……と書くと、たしかにフィルム・ノワールっぽい物語なのだが、本作はここから先で定型を大きく逸脱した展開を見せる。わたくし、驚いてポカーンとなってしまいました。
「夢想」の中の表現主義的な造形は時に壮観、時に貧相なのだが、いずれにせよ根幹のアイデアが言語的なので、映画としてはいまひとつドライヴしない。途中で出てくるスタンダップコメディアンなど、大げさな演技もあまり好きではない。ただ、復帰後のロザリンド・ラッセルの黒いドレスは美しくて見とれてしまった。