キャサリン子

ふるさとのキャサリン子のレビュー・感想・評価

ふるさと(1983年製作の映画)
4.0
ダム工事のために湖の底に沈もうとしている山間の小さな村を舞台に、自然の中に生きる村人の姿を叙情豊かに描いたドラマ。


「随分と古臭い映画だなぁ」と思いながら観始めたけれど、ものすごく良かった。
ダム工事によりもうすぐ無くなってしまう山峡の村。
そこに住む老人。
同居する子どもや孫。
学校。
地域の人々。

すべてがリアル。
特に、息子夫婦とのやり取りは現実的な描き方だったように思う。
長門裕之さん演じる息子があまりにも冷たいように見えるかも知れないけれど、こんなのよくある光景。
認知症が始まった親に、どこまでも優しい言葉をかけ続けることなんて普通はできない。
老いていく親を受け入れられないことも、息子が苛立つ要因にもなっている。
だれも、家族を責めることなんてできないのだ。


本作は古い作品でありながら映像がとても美しく、川のせせらぎや蝉やひぐらしの鳴き声が耳に心地良く癒やされた。
広がる映像、生活音、自然音にノスタルジーを感じ、切なさと懐かしさで胸がきゅっと痛くなる。
田舎で過ごした幼い頃の夏が、重なる。
ラストシーンではまるで自分の故郷が失われていくかのような喪失感に包まれた。


間違いなく加藤嘉さんの代表作であり、名作。
タイトルもぴったりだったと思う。
キャサリン子

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