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アンガー・ミーのmamのネタバレレビュー・内容・結末

アンガー・ミー(2006年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

ケネス・アンガーが語る、自身の半生とマジック・ランタン・サイクルについての貴重な解説。
作品からはイメージできないような、柔和な人柄と優しい口調。お年を召しても曇りのない澄んだ瞳が印象的だった。2022年で95歳、ご長寿!
(2023年5月に96歳で天寿を全うされました。悲しい...。)

60年代に親交を深めたジョナス・メカスは、優しく知的で神秘的な世界に魅せられた天才的な映像詩人と。

サンタモニカの中産階級で保守的な家庭に生まれ祖母から映画の素晴らしさを教わる。子役として「真夏の夜の夢」に出演しその体験から映画世界へと。

低予算での実験映像・前衛映画に感化され、監督で女優のマヤ・デレンも誘い、インディペンデント映画の配給会社をつくる。

映画祭で受賞した「花火」を観たコクトーから手紙を貰い、彼に会うためにフランスへ。多彩な活動のなかどのような表現方法でも詩人であるコクトーに強い影響を受ける。

フランスではアンリ・ラングロアの助手としてシネマテークで12年働く。彼が所有するフィルムで未完成だったエイゼンシュテインの「メキシコ万歳」の編集を任される。敬愛するエイゼンシュテインの意図になるだけ沿うように...。
奇術師だったジョルジュ・メリエスのオリジナル作品を多数鑑賞できる幸せ。

トリュフォー経由でハリウッドのゴシップをカイエ誌に発表し話題に。後にハリウッド・バビロンとして出版される。

ドルチェ・ヴィータと呼ばれる50〜60年代イタリア映画黄金期のイタリアに住みフェリーニやヴィスコンティ、パゾリーニらと交流。

"狂気をさらけ出せ"がテーマのハロウィン・パーティーで、ギリシャやエジプト神話の古代扮装をする参加者を見て映画にしようと思いついたのが「快楽殿の創造」。
SFチックな被り物のアナイス・ニン。キャメロン演ずる赤毛のスカーレット・ウーマンはこの映画の象徴として完璧。神聖なる狂乱パーティーからの熱狂的なエンディング。

儀式魔術師アレイスター・クロウリーに魅了され、魔術的な哲学と精神世界に傾倒。以降の作品にもさらに色濃く反映されてゆく。

ルシファー役のバンドマンだったボビー・ボーソレイユ(マンソン・ファミリーのメンバーで後に死刑囚に)にフィルムを盗難され、落胆し活動の休止を決めるも、移り住んだロンドンでストーンズや英国映画協会から活動の再開を勧められ復帰。

最も尊敬する人物として、映画史に深く精通したアンリ・ラングロアと、詩のように映像を撮るジャン・コクトーのふたりを。

2022-109
2023-219 再見 U-NEXT
(訃報に嘆き再見、享年96歳)
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