ボギーパパ

コーダ あいのうたのボギーパパのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
3.9
2022-11 TC新宿

2015年の仏作品『エール!』の舞台を酪農から漁業に変えた🇺🇸リメイク作品

『HOUSE OF GUCCI』で家族の呪い、醜い争いに浸ってしまったため、家族の愛が観たくなり、心の浄化のため鑑賞したのだが、よく考えてみると、悪く言えば家族の呪縛、束縛、もたれあいを見せての、そこからの解放をテーマとした作品のため、やはり呪いを見せられた事に変わりない(^^)

家族の中でたった1人の健聴者である主人公が、家族への想いと自らの才能・夢との狭間で悩みつつも決断し前へ進む話。

フランス版🇫🇷はどちらかと言うとユーモラスであり、聾唖者の描写もあっさりしていたためか、そのためにハンディキャップをあまり感じさせなかった。
そして舞台を漁業に変え、よりハードな生業を軸に据えた本作アメリカ🇺🇸版は、聾唖者が生きていく、仕事をする事に厳然として現れる大きな障害も描かれている。

しかし、この家族の間には仏米両作ともに、下ネタや性の話もしっかり描かれもし、所謂ハンデを感じさせない。オープンな空気がしっかり流れており、極めて自然。ここが良い!心地よいし、現代社会はこうあるべきなのだろうと感心してしまう。そして、エール!では弟だったが、本作は兄と設定が変わっていたが、ここは意義深いところ!

この作品を見た後、どこかの記事で監督の意図についてを目にした。

それは、「いわゆる『感動ポルノ』にしたくなかった」というもの。感動ポルノって言葉自体初めて聞いたものだが、これで一気に腑に落ちた。御涙頂戴に寄せず、しっかりと生活そのものを描いていたのはこのためか。

また、極めて自然な家族関係ではあるものの、そこにはやはり他者そして分かり合っているはずの家族の中にも、個体の間に高く聳える壁がある事。しかしそれを越えるには、やはり腹を割ってコミュニケーションを取るしか解決策はないという事。綺麗事だけじゃ済まないものだということもよくわかる。

感動というより、コミュニケーションの重要性、その多様性について強く納得させてくれた作品でした。
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