パルパティーン

コーダ あいのうたのパルパティーンのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.5
見る予定がなかったけどたくさんの人が見ているので鑑賞してきた。これは映画館で見て正解だった。

自分以外が聴覚障害を持っていて手話で通訳するのは当たり前となっていたルビーは、歌が好きで目標を持つようになる。それが、家族の生活に侵食してきている状態。このとても忙しい中でどうやってこなしていくか見ていた。

まず最初の方での絶妙な下ネタに笑ってしまった。がっつりではないので違和感を感じることはなかった。手話を介してそんな話をしているのがもうシュールすぎる。インキンタムシでHができないとなった時の両親もなかなかである。

歌の才能があることがわかったルビーは先生に期待される。そのV先生がもう最高である。なんて言ったらいいかわからないけど、このV先生には、先生として尊敬できるところがたくさんあった。この先生にはついていきたいなと思えた。今までずーっと家族中心の生活を送っていたから、自分のために何かしてくれる人や時間がなかったため、そこでのためらいやストレスが募っていく。生まれた時から大人だったルビーはここで、子供時代を取り戻す。ストレスを抱えたルビーが本来のパフォーマンスを出せないとわかると、V先生独自のやり方で発散させるシーンは、おーってなったし「教える」という仕事が天職なのが一目瞭然だった。

ルビーが家族とともに働くことを決意した時に、兄がそれを猛反対。「家族の犠牲になるんじゃねー」兄の気持ちはとてもわかるし、頼られたい兄であるが自分も聞こえないことで不備に思ってしまう気持ちがわかる。兄なら頼られたい。ルビーはルビーの人生があることを兄はすごくわかってくれている。

コンサート発表会では、娘の歌を聞きに見にいくが耳が聞こえないので周りに合わせて行動するしかないし、怯えながら周りを気にする表情がなんとも言えない。ここのシーンであの演出をしたのは驚いた。とても盛り上がるシーンなのに。このあとのシーンのことを思うと、これでよかったと思える。父親が言葉を理解しようとするシーンでもう涙が止まらなくなった。先生と父親との手話の挨拶のシーンは笑った。

これで決意したかのように、ルビーは音大の試験に連れていく。伴奏にV先生が来てくれて、本調子でなければわざと失敗して時間をくれた。最高な先生ではないか。家族に見守られながら手話を交えて歌っているシーンでは涙が止まらなかった。見事合格して家族と抱き合って大学に行くラストシーンもよかった。

彼氏役がシングストリートの主人公だったので、音楽映画にまた出てきてくれて嬉しい。この映画はたとえ障害を持っていても「なめてんのか」とアグレッシブにぶちかましてくれるので、少しもマイナスな気持ちにならなかった。そして、「頼る」と「押し付ける」の違いを教えてくれた作品でもあった。それぐらい優しい映画だった。これはたくさんの人に見てほしい。


2022年4本目