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コーダ あいのうたのpapuaのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.3
家族の中で1人だけ耳が聞こえるルビー。4人家族は全員漁業に携わっており、彼女は家族と仕事関係者の通訳としてなくてはならない存在だった。
そんなある日、ルビーは合唱部に入り、その実力が認められ、V先生から音楽大学を受験するよう薦められる。しかし、ルビーの歌声を聞くことができない家族は彼女の才能に疑問を持っていて…というお話。

フランス映画「エール!」のリメイクとして制作され、今年度のアカデミー作品賞にノミネート。

タイトルの「コーダ」は「children of deaf adults」の頭文字を取った略語で耳の聞こえない親を持つ、耳の聞こえる子という意味です。

主演のエミリア・ジョーンズはコーダとして育ち、自分の夢と家族との間で揺れ動くルビーを見事に演じています。特に手話をしながら歌うシーンは心に残る名シーンでした。

同じ合唱部でルビーとデュエットをすることになるマイルズを演じたのはフェルディア・ウォルシュ=ピーロ。シングストリートの主人公を演じた彼の美声は今作品でも輝いていました。

ルビーの家族は実際にろう者たちが演じているのですが、母親役のマーリー・マトソンはかつてオスカーを獲得した実力者。父親役のトロイ・コッツァー、兄役のダニエル・デュラントも印象的な演技をされています。

出演者たちの好演については実際に見ていただくとして、ここからはストーリーについて。

まず、ロッシ家についてですが、誰から見ても魅力的な家族であるのは物語の中で忘れてはならない点です。
明るく、ユーモアに溢れ、決して裕福とは言えないけれど、毎日を楽しく過ごしている家族なのです。

だからこそ、ルビーが夢と家族のどちらかを選ぶという究極の選択を突きつけられて、悩み、苦しむのです。

その思いは観客も同じで、ラストに近づくにつれて涙を堪えられないというレビューが多いのも、きっとそのためでしょう。

個人的に1番印象に残ったのは、無音のシーンです。映画館であれほど無音が続くことは初めてのことでした。

聴者にわかりやすく、ろう者である家族3人の状況を伝えるのにはベストな見せ方でしたし、彼らがルビーの才能に疑問を持ってしまうのは仕方がないことなのでは?と納得させられるだけの演出でした。

それでも、彼らはこの場面を経たことで、ルビーの可能性を信じるようになります。周囲の反応を目撃したことで、ルビーの夢が家族の夢になっていく様がゆっくりと着実に伝わるのは、本当に心地よい時間でした。

号泣とまではいかなかったけれど、後半は優しい気持ちが溢れていて、涙をせずにはいられなかった。

音楽を扱った作品は最終的に歌or演奏の素晴らしさで評価が上がりがちというのが持論なんですが、ストーリーの美しさと素晴らしい歌声が相まって、本当にいい映画だったなぁと。

ということで、アカデミー最優秀作品賞を是非獲ってもらいたい作品です!
未見の方には絶対見ていただきたい1本です!
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