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コーダ あいのうたのdm16のレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.6
素晴らしいの一言に尽きる…
映画館で観て本当に良かった。

聾唖という設定について、差別描写で強制的に心を揺さぶるのではなく、あくまで家族愛を最大限に描くための題材、という印象を受けたところがすごく良い。

声を使わずにここまで感情を表現できるものか、と驚いた。私がTVで見ていた手話は生きた言語ではなかったんやなと思った。

そしてどの登場人物も素敵。
「あなたも聴こえなければいいと思った」と語る母の言葉にドキッとしたけれど、その理由は「分かり合えないと思ったから」。母親の愛と、それゆえの不安がありありと伝わってきた。また、ルビーを音大に行かせたくないのは「あの子が本当は音痴だったら?」という以外な理由にも愛が見える。

「家族の犠牲になるな」と静かに激しく叫ぶ兄。最初から一貫して兄はルビーに頼りっぱなしの状況を良いと思っていなくて、言葉足らずでも愛が伝わってきた「失せろ」のシーンが刺さった。

そして、下ネタもチャーミングなお父さん。
娘の歌声は聴こえないけれど、観客の顔を見渡して精一杯感じ取るシーン、その後の喉に手を当てて振動を感じる姿勢に涙必至。

あなたの言葉で聞きたい、とたびたびルビーの思いを引き出すV先生に胸打たれる。
歌っているとどんな気分か?とルビーに聞くシーンが印象的。言葉では説明しづらい、と答えるルビーは手話で質問に答える。彼女にとって第一言語は手話であるということを知る。

クライマックスは彼女にしかできない歌を聴かせていて、彼女のこれまでは無駄ではなかったと思える瞬間。号泣。

書ききれないくらい素晴らしいシーンが多くて…。演出、演技、手話、キャラ、ストーリー、音楽、全てが良かった。

たとえ音が聴こえなくても、お互いが分かりたいと思えば解り合うことはできる。向き合うことがいかに尊いか…。
これは聾唖に限った話ではない。
全ての人に何かしら響くポイントがあるはず。
映画館で観ることをオススメします。
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