蟬丸

コーダ あいのうたの蟬丸のレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.0
 目新しくない、ベタだが、演技や演出に好感が持てた。ともするとごちゃごちゃとして見づらくなるような展開をうまくまとめている。
 夢や生きがいを人生の軸にするっていうのは勇気のいることだ。音楽でも絵でも文章でもなんでも、これをしなければ死んでしまう、というタイプの人間でなければなおさら。そういう人は滅多にいない。だからみんな「真っ当に」生きる。所得が減っている現代日本ではなおさら。
 知らず知らずのうちに誰かが足枷になったり誰かの足枷になっていることがままある(ちょっと愕然とした)。聾者の家族の中、唯一の聴者であるというのもまた障害(ディスアビリティの方)である。ただ外せばいい関係は本当の意味で足枷ではない。聾者と生活を共にするという以前に、ルビーは子であり妹なのだ。足枷である以上に、深い絆が彼らを結んでいる。兄貴の「家族の犠牲になるな」というセリフが涙ぐましかった。
 生きがいに生きることが足枷を外し、離れることがより強い絆を結ぶというまとめ方が綺麗だ。エッセンスとして入る音楽も聴き良い。
 マイルズ役の子は『シング・ストリート』にも出てるし、いい音楽映画専門なのか?
蟬丸

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