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コーダ あいのうたのringoのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.5
映画好きの母と一緒に映画を観た。
いつぶりだろう。この映画で良かった。

2015年の公開直後に小さな映画館で観た『エール』とは比べられない。どちらも大好きだ。

家族の中にいれば、みんな楽しく幸せで笑っていられる。でも一歩外へ出れば、聴こえない、伝わらない、理解できない。使う言葉に迷うけど、“疎外感”のようなものを感じた。

歌のステージを観ても、感想はもちろん見た目のことばかり。だって聴こえない。歌も何も聴こえない。周りに合わせての不器用な手拍子。切ない。

音の聴こえない世界を表現するシーンは『エール』にもあって記憶に鮮明に残ってる。二人の歌が素敵すぎて聴きたいと思わせてこれだから、観ているこっちも聴こえないことの悔しさを感じる。


母のルビーが生まれたときの話。障がいを持つ母と、障がいのない娘の、ふたりの会話に泣いた。

兄の「これでも兄貴だぞ」という言葉に泣いた。

父の「ベイビーじゃない、昔から大人だ」の言葉に父がどういう人かを感じた。

(私も末っ子だし、最近の個人的な出来事の中で実感してる。人生の先輩ばかりの家族から、ずっと守られている。)


父のためだけに歌うあのシーン。聴こうとする父の表情に涙が止まらなかった。聴こえなくても、想いは伝わる。

オーディションのシーン。手話には泣いた。届け。届け。嬉しそうな家族。愛おしい家族。

ラストシーンの「GO」が忘れられない。寂しくても、不安でも、それでも「行け」と言う力強い父の言葉。

あー、傑作だ。

(V先生も愛に溢れていた。それから、ルビーが家族のもとを離れても、助けてくれる人が家族以外にもできそうな予感を、所々に感じるのも良かった。)


母は私よりたくさん泣いてた。どんなことを想ったのかな。たくさん会話をする方ではないけど、同じ映画を観て一緒に泣いて。またこんな時間を作りたい。
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