魔導ネコ

コーダ あいのうたの魔導ネコのネタバレレビュー・内容・結末

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

 昨年のアカデミー賞3部門受賞作。ミュージカル映画としてもハートフル映画としても傑作。

 本作タイトルのコーダ(CODA, Children of Deaf Adult/s)とは聾者を家族に持つ子供の健聴者のこと。1980年代にアメリカで生まれた言葉で、1994年のTHE DEAF DAY'94という講演で初めて日本にもその名称と概要が紹介された。

 恥ずかしながら、「コーダ」という言葉の存在をこの映画で初めて知った。聾者について考える事はあっても、それを支える健聴者の家族(特に子供)について考えた事はほとんど無かった。ものに「名称」を与えることは、それまで外部から区別されなかった概念をラベリングして「見える化する力」がある。聾者だけでなくその家族(人生において様々な面で岐路に立つ子供という特別な存在について)社会が意識を馳せるきっかけにこの映画がなってくれるといいなと思う。


 本作のメインテーマは「家族愛」。聾者の両親は健聴者として通訳を担う娘の存在が生活上不可欠な上、その歌声を聴くことができないので娘を不本意にも束縛してしまう。一見毒親に見えながらも実は深く娘を愛しているという描写が見られ、家族との訣別ではなく、家族の応援のもとの成功。そして、親の娘離れが描かれている。



 発表会のシーンではクライマックスで画面から一切の音が消え、聾者のもどかしい感覚を味わうことができる。「音の暗転」とでも言うべきこの
演出は視聴者がちょうど歌に引き込まれた辺りのタイミングで生じるからとてももどかしい。

 入試にて手話を用いながら歌を歌うシーンは歌の詩(メッセージ媒体)としての力を再認識させられた。「歌は心で伝えるもの」。音を捨象したからこそ歌詞に載せて届けたい家族との思い出や愛が想いに乗って伝わってきた。

劇中歌、主題歌も最高。
家族との思い出、楽しさ、そして未来への門出。不安もありながらも自分の世界を広げていくことの好奇心と、自分の道を歩かせてもらえることへの感謝。いろんな思いが詰まってる。


この映画に出会えたことに感謝。
最高傑作!!
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