笑わせてよ

コーダ あいのうたの笑わせてよのネタバレレビュー・内容・結末

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

ルビーとマイルズのデュエットのシーン、音が無くなった時本当に強く「聴きたい…!!」と思った。聴きたいのに聴こえないことにすごくイライラして、静まり返っているのに周りが何故か涙を流していることに戸惑った。これが聾者側の感覚なんだ、と気がついた時初めて、本当の意味で聾者であることの切なさと苦しみが垣間見えた気がした。


本来なら、ルビーとマイルズの間にある感情が1番表現されるシーンがデュエットの本番シーンで、私が今まで見てきた様な「ハイスクール・ミュージカル」や「glee」では1番盛り上がる場面だった。そこで音楽が、音が全て消えることで今回の映画が最も伝えたい思いは何だったのか、監督が何を伝えようとしているのかハッキリと分かったように感じた。もちろんルビーとマイルズの間の甘酸っぱい青春も見所の一つではあるけれど…。

家族の絆って、ある意味の呪いなのかも。ヤングケアラー、アダルトチルドレン。
家族3人が聾者で必然的に昔から通訳係をせざるを得なかったルビー。
自分の人生を家族3人を支えるために使うのは、自分が消費されてるようで、自分のしたいこと、好きな歌を歌うのを我慢して家族の為に通訳に徹していく人生を送るのは苦しくて…それでも家族の事は心から愛しているからこそ見捨てることなんて出来ない、そんなルビーの気持ちがすごくすごくよく分かって苦しかった。
ここでルビーを無理やり縛り付けて、絶対に出ていかせない!ってするのではなくて最後はルビーのやりたいことを応援するところにこの家族の愛の形が表れていると思った。

お父さんもお母さんもお兄ちゃんも、漁師の一家だからかどこか粗雑。聾者である以前に(というか聾者であることに若干かまけて?)デリカシーのない行動をとってしまう節があった。そんな家族をルビーがフォローする、という構造だったけれど、これは助け合いのようで相互依存のような関係であったのかもしれない。最後には父も母も兄も、耳が聞こえないながらも周囲の人とコミュニケーションを取っているような描写がある。娘という通訳者に頼らなくなった、親離れ、子離れをしたことによって家族全員が新たな一歩を踏み出すことが出来た。

先生まじで良い人。Twitterで見た、「先生はルビーが家族の問題で遅刻していることは知っていたけれど、だからといって遅刻を許さなかったし配慮もしなかった。それは障がい者の家族を持っているからといってルビーを特別扱いをすることはルビーにとってもルビーの家族にとっても失礼に当たると知っていたからだ。」
というようなコメントは本当に素敵だと思った。まさにこれ!!これに尽きる。本当にいい先生、恩師…。

お父さんがルビーに「もう一度私のためだけに歌ってくれないか」って頼んで骨を触りながら歌を聞くシーン…あれはさすがに泣いてしまった。お母さんが、「もしあの子に才能が無かったら、音痴だったら?」って言っていたのが心にあって、お父さんは自分の手を伝って娘の歌を聞いて娘が特別な歌声を持っているんだと確かめたかったのかなと思った。

娘が聾者だったら良かったという母親の言葉には驚いた…。娘のことが理解できないかもしれない、良い母親になれないかもしれないという考えからだけれど…。
過保護だしあんまり子離れできていなかったけれど良い母親ではある。
お兄ちゃんの「お前が産まれる前は家族は平和だった」という言葉も印象的。人は意外と閉鎖的な環境の方が穏やかな気持ちでいられる…?なまじルビーという健常者の人と会話出来る手段が出来てしまうと穏やかではなくなる…?

マイルズが試験に落ちて(おそらく)ルビーが受かったのは、「歌いたい、歌が好きだ」という気持ちが歌に表れていたかどうかが分かれ目だったのではないかと思う。

ルビー役の子の歌が本当に素敵で…自信がちょっぴり無いように歌ったと思えば、先生の言葉を受けてお腹から声を出して叫ぶように歌う。歌が上手いだけではなくて、こんなに感情を乗せて歌うことが出来るんだって、凄く魅せられた!こんなふうに歌えたら気持ちいいだろうなぁ…。

出ている俳優さんたちがみんなみんな素晴らしい。本当は話せるなんて思えない、すごく手話や聾者について研究なさったんだろうなぁと思う。手話も感情が籠っていて一挙手一投足が見逃せなかった。

手話ってこんなに美しかったんだ、手話ってこんなに感情を乗せることが出来るんだ、と思った。

10mくらいの崖からマイルズが飛び降りる時、勢いがすごくて人間魚雷みたいで笑ってしまった笑笑

セックスワードや下ネタが幾つか出てくるので、親と見るのは少し気まずかった笑
まぁそこまででは無いのだけど…U12って書いてあったかな?


米国アカデミー賞3冠ということでだいぶ期待値が上がっていたけれど、それを超えてきた。観て良かった……本当に。全ての人におすすめです。

※映画を見てすぐに思ったことをつらつらと書き並べてあるだけなので内容ぐちゃぐちゃです。また整理するかも
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