やっち88

コーダ あいのうたのやっち88のレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.3
ずっと観ようと思って観れてなかった映画!

「耳が聞こえる、目が見える、手で触れられる、嗅覚がある」私たちからすればそれが「普通」で「当たり前」のように使える人が大半である社会とろう者の父、母、兄、そして主人公であり、唯一の聴者であるルビーの家族愛が描かれている1作。


何がテーマとか考えずにみて欲しい。ただピュアにこの作品を見て欲しい。




〜以下ネタバレ含む〜












まず、ルビー役のエミリア・ジョーンズは歌がべらぼうに上手い!本当に聴いていて情景が浮かぶし、消え入る高音、響くビブラートが心にスっと入ってくる。この子以外適役はいなかったと断言できるほど声も演技も素晴らしかった。

ルビーはろう者の家族の中で唯一の聴者であることからどうしてもろう者と聴者の通訳をしなければならない。心優しいし、しっかり者のルビーはその役目を果たそうと思う気持ちと、自分の夢を叶えたいという気持ちで揺れ動く。これが本当に苦しかった。家族のことは大好きなんだけど、じゃあ自分は通訳するために生まれてきたの?私は私の人生を生きることは出来ないの?と。

兄のレオは頼もしいお兄ちゃん。自分が「ろう者だから…」と弱気にならず、積極的に聴者のいる場所に関わりにいき、俺が家族を引っ張るんだと。普段はふざけてて、うざい典型的なお兄ちゃんなんだけど、それでも1番にルビーを家族の犠牲にしたくないと思いやる姿は本当に泣ける。失せろと強い言葉を使うけど、思いやりが伝わってきすぎるわ。大好きだ。

母のジャッキーは思春期からしたら典型的なうざい母親だなと思った。笑
そのうざさも我が子可愛さであり、自分の手から離れることを恐れ、どうしても家族と一緒にいて欲しいと願う家族の中の親心的な存在だなと感じた。ルビーの夢を最初はろう者家族への反抗だと捉えるが、次第にルビーが傷つくことを心配し、それでも応援する母親になっていく。

父のフランクは職人気質なThe一家の大黒柱的な無口っぽい側面もあるが、基本は陽気で強気で、かっこいいお父さん。ルビーの夢も母のジャッキーとは違い、昔からルビーは大人だったと語っていて、特にルビーの夢を否定することがなかったのがどれだけルビーに助けられてきたかをわかってるだろうなと。娘の声は聞こえないんだけど、周りの反応やルビーの真剣さを見て、最終的にはルビーの夢を後押し。

声が聞こえなくても分かり合うことができる。人はそれを障がいというけど、きっと僕ら人と人が分かり合うには障がいだらけだ。それでも、分かり合いたいと思えば、お互いが寄り添い合えば分かり合うことが出来るんじゃないのか?と考えさせられる1作。
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