平田一

劇場版 呪術廻戦 0の平田一のレビュー・感想・評価

劇場版 呪術廻戦 0(2021年製作の映画)
4.0
“呪い合え、すべてを懸けて”

来月から待望のシーズン2が開幕する芥見下々さん原作の大ヒットTVアニメ「呪術廻戦」シリーズ初の劇場長編アニメーション。ジャンプGIGAで連載された作者初の連載作品「東京都立呪術高等専門学校(単行本化の際は新たに「呪術廻戦0」が追加)」を原作に、自身の死刑を望んでいる高校生・乙骨憂太が仲間と出会い、命をかけた戦いに挑んでく。TVシリーズを圧倒的に凌駕する美麗作画と代替も思い付かないサウンドトラックのパワー、エモーショナルな人間ドラマの三位一体を目指したのは「地獄楽」も話題を集める制作会社MAPPAさん。

特級過呪怨霊・折本里香に呪われている高校生・乙骨憂太は自身の死を望んでた。しかし都立呪術高専1年の担任・五条悟は乙骨を呪術高専に招き入れ、乙骨は里香の呪いを解く決意を固めるがーー

とにかく緒方恵美さんが圧倒的にお見事です。意図的に碇シンジを連想させる一方で、乙骨憂太という人間にあくまで寄り添い続けてく。自分では制御できない力を前に停滞し、一方で甘んじたいとどこかで願う無気力感。けれどそこに、ぬるま湯に浸っていたらいけないことをしっかり分かっているからこそ、足掻き続ける泥臭さ。まさにジャンプの主人公に相応しい少年ですし、シンジ君より今日的な背景が良かったです。里香ちゃんと協力し、夏油と死闘を展開するときのあの激しい形相は、キャラデザと緒方さんの見事な相乗効果だし、最近見たスパイダーバース級にスゴかった!

あと自分はカップリングにニヤリとしちゃうタチなので、乙骨くんと真姫さんの関係がメチャ尊い。特に二人が教室内で語り合ったときのアレ、最高にもほどがあるし、二人の芝居も最高でした!

音楽もサントラ、主題歌、ED双方必聴です。乙骨君が呪術高等専門学校での生活を始めるパートで流れる曲「Greatest Strength」やKing Gnuさんの名曲「一途」がとにかくピッタリです。TVアニメのサントラとは大きく異なる哀愁・大義・純愛と深愛のぶつかりあいがホントにもう…もしこれを劇場で見てたらどれだけ良かったか…そんぐらいに見られなかったことがちょっと悔しいです。

五条さんと夏油のパートは逆に切なさいっぱいで、未だに夏油を親友として接する五条さんがもう…物言わぬ後悔や悔いを感じさせました(ここが来月から放送の内容の詳細か)。

ところどころ性急に感じるところはありますし、乙骨くんや里香ちゃん、高専の三人などのキャラクターの紹介に前半は大分特化してますし、物語のリズムもどうにももたもたしているようだったので、ちょっと単独作品として不満もないことなかったです。このあたりはユーフォさんの劇場版Fateもですが、もうちょっと新規勢も入りやすくして欲しい。あとこれは直近の『ザ・フラッシュ』もそうなんだけど、もうちょっと一つ一つの余韻や咀嚼の間が欲しい。噛み締めて、キャラクターにそれぞれ投影できるように、共感や応援や反感とか抱きたい。ギリギリ呪術は踏みとどまってるところはあるから良かったが…

「純愛」と「大義」

激突する二つのドラマや至るまでが熱いから、あれほどまで特大ヒットを飛ばしたのかもしれないね。マジでまた映画館でこれを流して欲しいなぁ。パンフレットを買いたいし、IMAXで観たいし…。
平田一

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