しゅうへい

劇場版 呪術廻戦 0のしゅうへいのレビュー・感想・評価

劇場版 呪術廻戦 0(2021年製作の映画)
4.0
―これは、呪術廻戦の原点の物語であり、“愛と呪いの物語”。

幼い頃に幼なじみ・里香を交通事故で失った乙骨憂太。怨霊と化した彼女に取り憑かれた彼は、呪術師・五条悟に導かれて呪いを学ぶ学校に編入。やがて彼は、同級生との出会いを経て呪術師としての道を見出す。そんな中、呪詛師・夏油傑が大虐殺の実行を宣言する。そして乙骨たちは夏油との戦いに身を投じていく。

原作者・芥見下々が本編連載前に短期集中連載で発表した、TVアニメで描かれる出来事の1年前が舞台である前日譚「呪術廻戦0 東京都立呪術高等専門学校」を基に、呪いと化した幼なじみに憑かれた青年・乙骨憂太の“愛と呪いの物語”を描く。

「失礼だな 純愛だよ」

作者はなぜ乙骨憂太を本編の主人公にしなかったのか。前日譚のみの抜擢…なぜ?主人公適性があり過ぎて惜しい。でも逆にそこが良さでもある。あまり言いたくはないが、虎杖悠仁ではなく彼が本編の主人公であれば『呪術廻戦』自体の評価が変わってた。温厚で心優しく人情深い性格でありながら、友人を傷つけられたら激昂する。とある過去が原因で気弱で陰気な一面も垣間見える華奢な青少年。緒方恵美以外演じてはいけない、生まれながらにして専属キャラクター。この作品で初めての推し。

「思う存分、呪い合おうじゃないか」

夏油の言葉で思い出す。正義と悪など揺らいでしまう程、彼らは互いに“呪い”を行使して戦っていることを。乙骨の物語でもありながら、その裏側で五条と夏油という親友の因縁が描かれた今作。かつては親友であった五条と夏油がなんらかの理由で過去に決裂し、敵同士になってしまった。その片鱗が、今作の随所の描写で描かれていた。それが何なのかは最後までハッキリしていない。終盤に意味深な描写もあり、過去編TVアニメ2期に続くと…。俄然楽しみになった。

相変わらず他作品からオマージュの嵐。『エヴァンゲリオン』碇シンジ=乙骨憂太。『GANTZ(オーサカ編)』現代の都市で行われる百鬼夜行と黒服の戦士達。『HUNTER×HUNTER』命を代償に強大な力を得るクラピカの「誓約と制約」。今作だけでも数えればキリがない。これを悪く言うつもりはなく、取り入れて昇華させるのが凄く上手い。話の内容自体は薄いのに作画、演出、音楽、その他諸々がそれを帳消しにした。本編が、虎杖悠仁達が霞む程の傑作。初視聴でも問題無しの起承転結、アニメの娯楽映画としては間違いなく満点。もしファンであれば悶絶していたこと間違いなし。

主題歌をKing Gnuに任せた時点で名作確定演出。しかもエンディングに2曲ねじ込むなんて本当にズルい。彼らの色を残しつつ、今作に馴染むジャンルの異なる2曲「逆夢」と「一途」。公開当時流れていたCMは思わず見入ってしまう程のインパクト、当時は興味がなかったはずなのに今でも忘れらない。天才集団たる所以が今作に詰まってる。
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