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隔たる世界の2人のvioletのレビュー・感想・評価

隔たる世界の2人(2020年製作の映画)
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タイムリープに落とし込まれた悲劇は、この残酷な社会がいつまで経っても変わらないという過激で皮肉なメタファーだった。これだけの重いメッセージを、たった29分で伝えることに成功していることに感動した。

「なら撃たれる前にここから消えろ」
まるで罪の意識がなくて恐ろしい。「悪いのはお前だ」と言わんばかりに偏見塗れの正義を振りかざし、"何もしていない" 人々の息の根を止めたのは一体誰なんだ。

"white privilege" (白人は生まれた時から特権をもっている) とも言われるアメリカ社会において、変わるべきは白人側。なぜなら弱い立場は常に無力で、抗うことさえ許されないから。そんな中でも未だ「黒人が悪い」とされるのか? 利益と恩恵の為に黒人を利用したのは白人。どれだけ歴史を遡ったって、いつも無条件に優位な立場にあるのは白人でしょう。

一方ジョージ・フロイドの死から世界中で激化した抗議運動によって、数多くの人々の意識が変わったことも事実。世界はこの変貌の機会をものにしてほしい。彼らの死をせめて無駄にしないでほしい。

まずは自らのもつ特権の大きさを認めて、「equality(平等)」でなく「equity(公平)」を社会全体で追い求めなければ、この最悪な状況は永久に改善されない。当たり前の権利を望む際に、人種が障壁となるなんておかしな話だ。All lives matterの前にBlack lives matterを叫ばなくてはならないのはその所為。

バイデン大統領も、「体系的人種差別(個人の感情抜きにして、社会で確立された不可抗力の差別システム)が自身の国の汚点であり、恥ずべき慣習だ」と明言していた。今後さらに問題意識が高まり、このような惨劇のループが終わる未来が来ることを強く願っています。
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