眠る猫

コットンテールの眠る猫のレビュー・感想・評価

コットンテール(2022年製作の映画)
4.8
コットンテールと聞いて思い出すのは、ピーターラビット。ピーターの妹の名前。
イギリスの湖水地方を訪ねる話だろうか?と思っていたら、確かに湖水地方を訪ねるのだけど、そこには重いテーマが置かれていた。

認知症を患う妻に先立たれた夫と息子。
その葬儀の日に妻の手紙を受け取る。そこに自分が亡くなったらウインダミア湖に散骨して欲しいと書かれてある。
その願いを叶えるべく夫と息子家族で湖水地方を訪ねる。

リリーフランキーはこういうくたびれた愛想のない男の人を演じるのが上手いと思う。
この夫婦の青年期を演じた2人も雰囲気が似ていて良かった。

兼三郎がイギリスの田舎で出会う父娘の2人がとても良かった。
イギリスも田舎に行くと親切な人が多い。
彼らの兼三郎にかける一言一言がとても優しい。
彼らと話をしているシーンでは涙が込み上げてきた。
特に「彼に尋ねたのか?」は涙が溢れてしまった。
名前が同じだから、本当の親子なのかな?

なぜイギリスのウインダミア湖なのか?
それがずっと不思議だった。
幼い時の家族で過ごした記憶だけでなぜか?と思っていたけど、ラストカットで腑に落ちた。
いつの間にか確執のできてしまった夫と息子を、かつて自分と父親がそうだったように、この地なら取り戻せると思っていたのかもしれない。
湖のそばでコットンテールを追いかけて欲しかったのかも。
(フロプシーでもいいじゃないかと思うけど、そこは追いかけたということでコットンテールでいいんだろうと無理やり納得)

ピーターラビットをイメージしてしまうタイトルからは掛け離れた重いテーマだけど、全体的には不器用な優しさがあった。
日英合作らしく、イギリスらしさ日本らしさが出ている映画だと思う。

認知症介護をしたことある身には辛いところもあるけれど、いい映画だと思う。

明子さんの症状をみると病気は認知症だけてはなさそうだけど、そこを敢えて深掘りしないのも良かったのかもしれない。
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