亡くなった妻に導かれ、父と息子が奏でる喪失と再生の鎮魂歌。
大切な妻を認知症との壮絶な闘病生活の末に亡くした兼三郎。イギリスのウィンダミア湖に遺灰をまいてほしいという妻からの最後の願いを叶えるために、兼三郎と息子の慧一家はイギリスへと旅立つ。
イギリスの広大で優雅な自然美を舞台に兼三郎と慧が次第に心を通わせていくロードムービー。必要最低限のセリフと役者の演技力で最後まで惹きつけられた。
憲三郎の気持ちも、慧の気持ちも、明子の気持ちも分かるからこそ、家族との向き合い方を考えさせられた。特に「父さんの世界に入れてほしかった」という慧の悲痛な叫びは胸に迫り来るものがあった。