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ゆるキャン△のNowLoadingのレビュー・感想・評価

ゆるキャン△(2022年製作の映画)
4.2
 本日の一本。松竹ロゴがそのまま富士山に変わる、インディリスペクトのシークエンスで本作が名作であることを確信する。

 シーズン2の最後になでしこが言う「伊豆キャンが終わって帰らないといけないのは寂しい」。それにリンが返す「またキャンプに行こう」のやりとり。僕はこの何気ない会話に何故か涙が溢れたのを覚えている。東京に帰ればまた仕事が待っている。しかし、リンの「帰宅道中の少しずつ見知った風景が見えてくる安堵感」も共感しているし、東京で稼ぐお給料がまた新たな旅路の原資となることも分かっている。

 この映画はまだ私がゆるキャンに目覚める前に公開を終了していたために映画館で見ることはなかったが、ともかく観れる日がきたらそれは自宅ではない特別な場所で観ようということは決めていた。いち早く配信してくれたプライムビデオには感謝しなければならない。

 さて、タイトルの名の通り仲良し女子高生がキャンプを通じて絆を深め、キャンプのあるあるをしっかりと描き、観光、温泉、富士山周辺の魅力を余すことなく詰め込んだゆるキャンは映画に伴い大きな変化が待っていた。

 野クルメンバーは大学生を飛び越えて社会人になっていた。リンは一宮→名古屋、なでしこは東京昭島、あおいと千明は地元山梨に。それぞれの道を進みバラバラとなった彼女たちがキャンプ場を作るために再集結する。制作陣には当然大学生となった彼女達のレベルアップした表現で野クルのキャンプを鮮やかに描く選択肢もあったはずだ。

 しかしこの映画で描かれるのは他でもない私達自身であろう。アパートを出て、駅から通勤電車に乗り、地下鉄丸の内駅そばのオフィスビルに入りデスクワークを始める。休日を取ることもロクにままならず、久し振りの連休というセリフや職場で迎える初日の出など、志摩リンという女性は架空の女子高生から現実に存在するオフィスレディへと変貌させた。この思い切りに感服させられる。

 そんな彼女が野クルのリーダー大垣千明によってかつてのメンバーと共に新たなキャンプ場「富士川松ぼっくりキャンプ場」を作る。それは自分たちを受け入れてくれた場所への恩返しのように。彼女達の大人びた装いやテンションアゲアゲの声色から落ち着きのある息遣いが年月の経過を思わせる。

 彼女達は長い月日のなかでキャンプ力を身に着け、高いレベルで寂れた施設を現代的なキャンプ場に改装を施す。テレビシリーズであった水曜どうでしょうのリスペクトがこのような形で帰結するのもなんだかスタッフのやりたいことを作品に落とし込んでて非常に興味深い。

 野クルメンバーはテレビシリーズでは味わうことがほぼなかった(大人達がフォローしていた)危機に直面することになる。そしてそれは責任ある自らで解決していく様は彼女達の成長を感じさせてくれる。守られるのではなく守っていく。自分たちでやりたいことをやり通す。その行動力や変わっていく現実と変わらない友情に大いに感動してしまった。

 ある意味大団円となった本作は先日シーズン3が発表された。どのような展開なのかはわからないが、もう一度リアルタイムで野クルメンバーに会えるのは楽しみで仕方ない。

 最後にこれは個人的な話だが、やはり旅行帰りに東京駅や羽田空港に帰り着くと憂鬱な気分になることはいつもそうでやるせない気持ちになる。でも彼女たちの「だからまたキャンプ行こうよ!」の言葉を胸に抱いて、山手線に乗り込むのだ。(こういう言葉は木村提督の「帰ろう、帰ればまた来られるから」という言葉も肝に銘じている)

 素晴らしい傑作映画だったと思う。これからの彼女達のキャンパー人生に幸あらんことを。<武雄温泉駅発長崎行かもめ21号車内にて、特急リレーかもめ21号の到着を待ちながら>
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