河

Song of Armorica(英題)の河のレビュー・感想・評価

Song of Armorica(英題)(1934年製作の映画)
3.4
ブルターニュで作品を作っていくうちにブルターニュから宣伝目的の作品を作って欲しいっていう依頼が来てそれで作られた作品らしい。セリフも歌もブルトン語であり、脚本もブルターニュの人との共作らしい。セリフも少なく主軸となる話は映画内で歌われる曲によって語られる。かなりミュージカルに近い印象。

主人公の青年は富裕層の女性と恋に落ちているが、その女性は富裕層の男性との結婚が決まっており叶わぬものとなっている。主人公は(その女性と会い続けて勉学を疎かにしたから?)神学校から退学させられる。漁師としての仕事を得るが、生まれつきフック状の小指を持っており、縁起が悪い(フックが船の上にあると魚が釣れないというジンクスがある)という理由で船から追い出される。

主人公はどこにも居場所がなく、神にも海にも近づくことができない存在となっている。主人公は漁に向かう船の上で海の姿にその女性の姿を見るが、その海から主人公は追い出される。

同時に、女性もその富裕層の生活の中に居場所がない。この監督の他の作品同様海が死の世界の象徴のように描かれており、女性は海へと飛び込んで死ぬ。主人公は海を通して死んだ状態の女性と再会する。その死体の横で神に近づくことができればと歌う主人公に対して、海がオーヴァーラップされる。生まれを理由として近づきたいもの全てに近づけない主人公の悲劇の話となっている。

曲に対して映像を当てていた『揺かご』の延長線上にある作品なんだろうと感じる。
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