半兵衛

2ペンスの希望の半兵衛のレビュー・感想・評価

2ペンスの希望(1951年製作の映画)
3.3
内容はネオリアリズモらしく不景気のイタリアで満足な職業に就職できず生活苦にあえぐ青年を描いているのに、主人公をはじめ登場人物はみなバイタリティに溢れ前向きなため状況がひどくなっても暗くならず映画のハイスピードなテンポ同様に「次こそ大丈夫!」という根拠のない自信を持って次へ行こうとする。そんな彼らを見ているうちにこちらも不思議と元気付けられていく。

そんな個性的な奴らばかり出て来てとにかくしゃべりまくる展開にひたすら圧倒されるが、そんな奴らの中でも特に個性があるのがヒロインで主人公の恋人。それなりにいいとこのお嬢さんであるはずなのに髪はボサボサ、主人公のやることを手助けしようとしてサザエさん並みにしくじって台無しにする、出てくるたびに歌をがむしゃらに歌って登場する、猛獣のような勢いででかい声で喋る…。挙げ句の果てに主人公が女性と付き合っているという噂を聞くと嫉妬に駆られ実家が営む花火造りの倉庫から大量の花火を持ち出してお祭りでもないのに広場で大量に爆破するのにびっくり、花火の中を嫉妬で狂乱し走りまくるヒロインという『春婦伝』を過激にした場面の怖さと美しさ!そんなヒロインを見捨てることなく包み込むように主人公が愛しているので段々二人が愛おしくなってくる。ちなみにこの女性キャラ増村ヒロインのキャラとどこかダブるが、増村監督もこの映画を見ていたのだろうか?実際増村監督はイタリアに多大な影響を受けているし。

前向きで終わるラストがまぶしい。
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