個人的に庵野監督にも石ノ森作品にも特撮界隈にもそれほど思い入れのない私だが、これほどワクワクしつつドキドキしつつドギマギしつつハラハラしつつつウルウルしつつ観た映画があっただろうか。
本作を観ていてとても好感度の持てるところは、前作『シン・ウルトラマン』同様に昭和特撮ドラマ時代のエッセンスを踏襲しつつもそこに終始せず「令和のエンタメ」としても成立しているギリギリのせめぎ合いのようなものが感じられる所だと思っている。
本作はその塩梅が絶妙なのだ。
例えるならば、知る人ぞ知る的なインディーズバンドの放つパッと聴きアバンギャルドな曲のような境地に拘泥せずに、アバンギャルド性も取り入れつつあくまでメジャーフィールドで闘うスタジアム級のステージを満杯にするポップスターの新曲の如く様々な層にアピールする事を宿命めいたものすら感じるのだ。
確かに、いや現にこの公開初日直後の現在ですら巻き起こってるが、自称映画マニアみたいな「批評オーグ」らの眉間に皺寄せたような指摘、或いは自称特撮ファンみたいな「特撮オーグ」のこれまたよくわからマニアックな検証、或いはCGがどうたらエフェクトがどうたら構成がどうたら制作サイドでものを語りがちな「技術オーグ」等の謎の上から目線のゴミカスみたいな批判に晒されてる事もあるだろう。いやもう彼らは公開初日に既に侵食してしまっているんだけど。
だが、そんなものをほっといても本作はそれを承知で立ち向かおうとする強さを感じるのだ。むしろそこに惹かれてしまう。
確かに「批評オーグ」「特撮オーグ」「技術オーグ」らを喜ばせようとすれば、おそらくたこつぼ型の知る人だけが参加する事ができるごくごく限られたコミュニティー内でのテイスティング合戦にて何らかの一定の評価入れるかもしれない。
だが、そこに拘泥しようとせずポップミュージック足り得んとするこの勇気。そこに強いロマンティシズムすら感じるのである。そこをほんとに感じるのはあのキャラと、あの女キャラと、あの男キャラで....とか言いたいんだけど、公開間もないこの時期にこれは言ってしまったらネタバレ犯罪人として指名手配されてしまう。
しかしほんとにこの作品はどっからどこまでネタバレ禁止仕様になっているので早めに見た方が良いと思う。特にキャスト情報にはバッサリ、予告編すら目と耳を閉ざして観に行くべし。
あ、そうそう、変な掲示板スレッドに張り付いて「今回観に行くのはスルーしとこうか」などとウジウジ書き込んでる「ちゃんねるオーグ」の皆さんについて忘れてた。
君たち、そんな20世紀のインターネッツ創世記の産物みたいなカスみたいな掲示板に迷わず観に行きなさい、心の中にズッシリと痕跡を残す作品である事は間違いないから。
間違いなく本作は今の時代の時代の空気を写像する鑑となり得ると思うから。
