庵野秀明による全く新しい仮面ライダー。
シン・シリーズ最新作。
シン・シリーズは好き(『シン・ゴジラ』は人生ベスト)。庵野監督作品はファン。仮面ライダーは全てではないが、平成ライダーを中心に見ておりゴジラ、ウルトラマンより思い入れがあるという立ち位置。
が、本作は正直退屈だった。庵野監督のファンですが、過去の文脈や権威があるからと言って何でも褒めるのは違うかなと。今作を機に毎週のニチアサの放送のクオリティの高さと毎年アイデアを更新しつづけている事のすごさに気付かされましたね。今を見るべき。
良かった点はとにもかくにも役者陣。池松壮亮の物言わぬ表情の芝居、柄本佑のキザな台詞回しのかっこよさは絶品。そしてなんと言っても浜辺美波。声色、佇まい、表情1つで画面を支配しているし、「孤独」に悪に立ち向かう姿はライダー以上にキャラが立っていた。見終えた後も彼女の凛とした眼差しが頭から離れない。綾波レイに見えると言えばそれまでだけど、本当に虜になりそうだった。彼女が映っている場面は全部良いです。
ライダーは不気味で凶暴な怪物。という前提を観客に思い出させるような本気で凄惨な暴力表現の数々も良い。また、仮面を被る/外すでドラマを作って「孤独に戦う人間＝仮面ライダー」という作品の本質を見せるのも巧み。上述した暴力に仮面の中で苦悩しながら、それでも戦っていくのがヒーローなのだ。という精神性を説いている後半の展開にも胸打たれた。この精神が描かれているのはヒーローものとしても、仮面ライダーの原点に立ち返るという意味でも素晴らしい。要所要所に挟まれる庵野作品特有のグラフィカルかつ寂れた構図も苦い雰囲気にマッチしていた。
ただそれ以外の映画の基礎的な体裁の部分はどうしようもないくらい雑と感じた。冒頭のトラックの吹っ飛ぶシーンの迫力のなさから伝わる貧相なアクション演出とCGバトル(それが昭和の再現だとしても映画としてエキサイトできる代物ではなかった)、本郷の「孤独」が文字通りセリフでしか語られない＝全く感情的なドラマが生まれえない薄い人物描写(上述した役者の魅力でギリ保っている。『シン・ウルトラマン』と同様の問題でもある)、母性信仰と辟易するようなセクハラ描写と300倍薄めたエヴァ要素が詰まった脚本(仮面ライダーでやる必要ある？)、まるでビデオカメラのようなルック。ノイズが多くて作品世界に没入できなかった。
正直細かい所が雑でも「ライダーかっこいいな」「変身したいな」そう思えればライダー作品は満足なんです。『シン・ゴジラ』や『シン・ウルトラマン』には虚構に触れた満足感や映画を見たなという充足感はあったし。ただ、自分は残念ながらこの作品からそれらのエネルギーを受け取ることもできなかった。色々言ったけどこれが全てなのかもしれない。アガれなかったんです。
激怒！と言うよりは楽しみにしていたのにしょんぼり…というのが近いかな。上述したように良い所もあったのだけど、気になる所が上回ってしまい、映画としては面白く見られなかった。
ただ、浜辺美波があまりにも良すぎてもう1回見たくなっている自分がいるのもまた事実。(ゲストヴィジット本当に最高でした、一生の思い出)
