ふぃるま

シン・仮面ライダーのふぃるまのレビュー・感想・評価

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)
3.8
なかなかに良かった。

50年前のテレビのヒーローを現代の劇場版として全体的にブラッシュアップしたという印象で、私の観たいものが観れたって感じでした。

ライダーや敵の造形、生々しくもカッコいいアクションシーンが良い。
アメコミのヒーローものと一線を画す見せ方に成功していた。

50年前なら無視できていた根本的な疑問(例えば敵の組織の収入源だとかヒーローの能力の必要性とか(笑))にも、まあ納得できる設定を与えられていて、うまく逃げていた。
その分説明ゼリフが増えていたが、そこは仕方ないと思う。
そもそも架空の物語をリアルに描こうとしているので、世界観の紹介は必要なのだ。

山の中に強引に建てられた感じの道路とか建物とかって、私、なんか好きでねえ。
自然破壊と言う声もありましょうが、なんか厳しい自然に人類の叡智が立ち向かっている感じがするのです。
そういった雰囲気の溢れるロケもよかったです。

なによりオリジナルへの愛が感じられたのが良かった。
それも、マニアックな方向を突き詰めるのではなく(そういうところもあったのかな)、秘める魅力を引き出そうとする感じ。

ただ、ナイトシーンのアクションが多いのが、ちと難点だったかな。


実はヒーローものや戦争ものって矛盾をはらんでいて、それは平和のためというならそもそも戦わない方がいいじゃんというやつです(笑)。
ヘタすりゃ一人の悪党を懲らしめるために、数百人の市民が巻き添えになっている、なんてことも(笑)。

でも派手なアクションシーンの無いヒーロー映画なんて誰が観たいねんという感じで、作り手はいかにしてヒーローの闘いに必然性を持たせるかという点で、敵の設定だとかヒーローの戦う理由などの落としどころを日夜熟考しているのだ。

リアルにすればするほど、こういうジャンルだからアリというミュージカル映画が持つ逃げが通用しなくなってくるし、ファンタジーに向かうと重みがなくなってくる。目が肥えて、かつ多様性を持つ現代の観客を納得させるのは相当に難しい戦いだと思える。

この映画はそういった点で、現代の日本のヒーロー映画としての形を作り上げたと思われます。
ふぃるま

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